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小さな白い東屋でサラサラと流れる旦那である成太(せいた)の毛を撫でる一緒に植えた秋桜畑の香りを鼻孔で感じながら秋の涼しい夕日を眺め赤い空に浮かぶ少しピンク色をした雲が可愛らしく流れている姿がハートのような気がして少し笑顔になる、
僕の愛しい人彼が寝たのが先週の木曜日20時、朝は食事を与えた。食べながらも眠る彼、口に運べは咀嚼し目を離すと寝ている、トイレは自分で起きてしているがどうにもボーとしているそんな事が2ヶ月に一回彼には起こるだいたい1週間くらいは寝てるか起きてるかわからない状態でひたすらに寝ている
眠れる森の美女症候群、周期的にこの状態になることから周期性傾眠症とも言う、原因は判明しておらず、ただただ深い眠りに入る、起こしても頭が起きず認知症や行動障害ともとられることもあるが、それはこの症状が出ている時だけで普段は至って普通に生活できる、大体大人になれば治るというが成太にはその兆候がない、定期的にやってくる眠りの日々、二人で開いたカフェはホールをバイトに任せて二人でキッチンをするので繁盛期に成太が寝ると目が回るほど忙しい、それでも彼を捨て置くことなどできない、仕事の時はヘルパーさんに頼ったりしながら彼の病気に付き合っている、基本寝てるだけで食事をとらせ風呂に入れる以外は手がかからない、寝ている彼に目が開いてるからと話しかけても芳しい返事は帰ってこない、ただ食べ、目を話せば寝るそればかり
普段の彼は快活で日に焼けた肌が印象的な豪胆な男だ。スタッフが足りずホールに自分で得意のペペロンチーノを客に出せば妬けるほどに女に人気がある彼が言うには「お前も人気あるんだぞ?」と言われるがよくわからない、常連さんは僕らの関係を知っているし彼の病気も理解してくれていて、彼がいない時はペペロンチーノではなく僕の得意なミネストローネを頼んでくれる、僕もペペロンチーノを作れないわけでは無いが彼のペペロンチーノが特別美味しいし君のミネストローネが特別美味しいし、2つ揃えば最強だなんて言われれば嬉しくなる、優しい秋風が頬を撫でる、今日はカフェの定休日、カフェの裏は花畑にしていて季節の花を植えている休みの日に種を撒いて咲終わりも休みの日に種を集める、冬は庭を囲うように植えた山茶花がキレイに咲く
裏庭の東屋は人気のカフェスペースでお店を開けている時は客席の一つ、休みの日は僕らの日向ぼっこスペースだ。
深い眠りについている彼はまだ目覚めない、眠り姫になってから7日そろそろ目覚めてもいい頃だよなぁと思いながら、気持ち良さそうに寝る彼の頭を撫でる、誰も来ない昼下がりの秋桜畑の東屋、男同士の僕達はパートナーシップ制度を利用して結婚と言っている、彼の病気は僕らが高校の時に発症した。長い付き合い、僕らがどれほど仲がいいか知っていたが両親達は最初反対した。でも無理矢理同棲を初めて二人でカフェを始める時には認めてくれるようになった。成太の両親は本当に成太で良いのかと何度も聞いてきた。僕はその度に成太が良いんだと言った。成太の病気など気にしない、ただ成太がそこに居てくれればそれで良い、眠り姫になった成太の世話だって楽しい、彼と一緒にいれるならどんな苦労だって楽しいんだ、そんな思いを成太の母親に告げればおいおいと泣いていた。
病気のせいで成太の将来が不安だったらしい。
結局孫は望めない関係だけどと言えば兄と妹に期待するから大丈夫と告げられた。
僕の母親は最後まで反対していたくせに今は店の手伝いや眠り姫の成太をヘルパーさんの代わりに見てくれる事もある。
「あんたが幸せそうに過ごしてたらもう反対なんてできないわよ」
呆れたような安堵したようなそんな微妙な顔で僕らを認めてくれた。
カフェフラワー
僕の趣味で花畑を作っているカフェ、豪胆な彼には面白くない作業もあるだろうに僕と一緒なら楽しいと彼は種まきも種拾いも苦にせず付き合ってくれる
春はチューリップ、夏はヒマワリ、秋は秋桜、そして冬の山茶花、冬に外で食べる人は居ないが山茶花の撮影をしに行く人もいる、各季節に庭で食事をする人は食事と花を一緒に撮影すのだ。
そんな姿を見ると成太は嬉しそうにしている
「あんなに喜んでもらえたら植えたかいがあるよな」
にかっと笑う成太に僕も笑い返して頷く
そんな花畑「んん、」とくぐもった声が聞こえて成太の顔を見ると、瞼をパチパチしてからゆっくり僕を見る
「んーーー!おはよ龍二」
「おはよ、成太」
夕方の遅い目覚めに僕達は挨拶をする
あぁ幸せだ
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