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少女――クムイは自己紹介をすると、焚き火に木をくべて、そうそうに眠りについてしまった。敷物と羽織物を渡されたエシュは、同じように敷物を下に眠りについているクムイを見つめる。
ぱちぃっと焚かれた枝が音をたてる。
こうして呼び出されたのは、いつぶりだか思い出せない。人間の時間でいえば長いだろうが、もしかしたら思うほどより短いのかもしれない。
それはともかく……。
――クムイという娘の、取り込んだ命の期限は少ししかなかった。
エシュが思うには、この少女は三日かそこらで死んでしまうだろうということだけだ。
表情も硬くなってしまう。見たところ病気や何かを抱えている様子はない。
この三日の間に何が起こるのか。事故か殺害かそれとも発症の早い病か自殺か。
何かが少女の身に振りかかる。
人の身は嫌いだ。正確には、人間が嫌いだ。人はすぐ流行りというものを作って、昔の音楽など忘れてしまう。それがよくわかるので、できれば呼び出されたくない。
しかし少女はすぐに死んでしまう。少しの我慢だ……少女はその中でも瞬きひとつの時間しか残ってないと言っていい。あまり深入りせず、適当にあしらっていればいいだろう、その方が気が楽だ。そう思っても、エシュはため息を零してしまうのだった。
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翌日。
クムイは幌馬車を引いていた。すれ違う商人や旅人が首を伸ばしてクムイの幌馬車の御者台を覗き込む。こんなにも注目を集めているのはクムイがいるからではない。選ばれた歌姫といえクムイのことを顔まで知るものは少ない、原因はエシュだ。
御者台に乗ったエシュは悪びる様子もなくどっしりと座っている。精霊が表に隠れもせずいるのは珍しい……ゆえに注目を買っているのだが、エシュはどこ吹く風だ。
「あの……エシュ? 申し訳ないんだけど……わたしの外套を羽織ってくれないかしら?」
「お前の小さな女ものの外套などつけていられるか」
顔を隠してほしいと頼むも、つっけんどっけん返されてしまう。クムイとしては頭痛の種でしかないが、強くは言えない。
「馬車の中に入ればいいだろう」
そう幌馬車の入口の幕にエシュが手を伸ばすので、慌ててクムイは怒鳴った。
「だ、ダメっ!」
強い声に流石にエシュもびくっと驚いて振り返る。クムイは声をあげたことを恥じらい「ごめんなさい」ともごもごと続けた。
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