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 クムイは真っ直ぐを見ながら、悲しそうな表情をしている。 「音楽の精霊のエシュに、恥ずかしいもの聴かせちゃったわね」  ゆっくり振り返った顔は、また作り笑顔だった。 「何を言っている?」 「下手、でしょ。癖も強くて聴けたものじゃないわ」 「だから何を言っている?」 「これじゃあ、誰も聴いてくれないから……」  クムイはふーっと息を吐くと、六弦琴をまた抱きしめるように抱えた。自信がない時や不安な時にそうするのが、クムイの癖のようだ。  首を傾げるとエシュを見てまた笑う。諦めている人間の顔をしていた。 「何度も聞くが、何を言っているんだ? 先ほど聴いたものでおれは呼びだされたんじゃない。今の歌声だ。素晴らしかった」 「嘘をつかなくていいわ、わかってるから」 「わかってないのはお前だ」 「わかってるのよ、本当にわかってるの。わたしの声はダメだって、誰も聴かないって」  クムイはエシュの言葉など届いていないのか、首を振ってまた俯いてしまう。  エシュにはそれが理解できなかった。何故ここまで自信がないのだろうか。輝く宝石を持っているのに、クムイはそれを見ようとはしない。 「何故そこまで、自分を下げるのかわからないな。誰が聴かないだろうが、おれが聴く。胸を張れ」 「それじゃあダメなのよ!」  突然、クムイが感情的に叫んだ。何度も首を振り、目には涙を浮かべている。 「歌はあなたじゃなくて、みんなに届かないと消えてしまう。そもそも誰も聴かないと生活できない。いい音のでない楽器は不良品と同じ。わたしの本当の声は、不良品、ゴミと同じなのよ!」  ぶわっと花から大量の光の粒が飛んだ。左手で粒を邪魔そうに払って、クムイは息を荒くする。思わずエシュも感情的になる。 「おれが聴くっ」 「でも誰も聴いてくれないっ」  負けずにエシュも叫んだが、隙もなくクムイは言い返す。 「たった一人でもおれが聴く」 「誰も聴いてくれなくちゃ意味がない」 「おれが聴く」
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