10人が本棚に入れています
本棚に追加
「シロが死んでまだ1年も経っていないのに!もう新しい代わりの犬を飼うなんて!!」
この犬は何も悪くない。
私が怒っているのはシロを簡単に忘れ去った飼い主にだった。
仕事場の番犬として一生重い鎖に繋がれ、何の楽しみも喜びもなく死んでしまった可哀想なシロ。
噛みつくことも吠えることもなく、ただ大人しく私だけを待っていてくれた穏やかなシロ。
不満や怒りに任せて、平気で子供だった私を傷つけてきた犬たちと比べた時、シロはなんて温かく優しい犬だったのだろう。
一体、そんなシロがどんな悪い事をしたというのだ!?
私まで、シロを忘れるのは絶対にイヤだ!!
だから私はこの新しい犬がどんなにしっぽを振っても、決して声を掛けなかった。
一生懸命にしっぽを振っている真剣な姿に後ろめたさを感じながらも、私は口を真一文字に結んで、ただ黙々と犬小屋の前を往復する毎日が続いた。
そんなある日。
「あれ?毛が生えてる?」
最初のコメントを投稿しよう!