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新しい犬はすっかり毛が生え揃っていた。
もう、やせっぽちの小さな短毛種ではない。
体が裕に2、3倍は大きくなっている。
しかも毛皮はビミョーなねずみ色。
堂々たる大きな丸顔に黒くて小さな瞳。
そして、何と言ってもボリュームたっぷりのフカフカモコモコの立派な体型。
そして、あの頃と変わらず決して犬小屋に入らず、4本足ですっくと立ち上がった立派な姿。
これは……この犬はまさか……。
「あんたやったとね!?シロ……!」
私は博多弁丸出しで叫ぶと、喜びの余り危うくシロに抱きつきそうになった。
「うわ!ダメダメ!勝手に仕事場に入っちゃ!」
犬恐怖症が完全には治っていない私は、何とか理由を付けて踏み留まる。
そしてしげしげと、ふわふわに復活したシロを見つめた。
私が興奮気味に話しかけても、肝心のシロは吠えたりじゃれ着いたりすることもなく、「今頃気づいたの?」と、ばかりに超然とモコモコの箒のしっぽを振っていた。
だが、ここで疑問が残る。
シロは一体、この夏どこにいたのだろう?
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