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私は茫然として、ガランとした格納庫の前に立ち尽くした。
私がこの建物の前に足を止めたのはこれが初めてだった。
今まではただ通り過ぎるだけ。
ただ、シロが怖くて……迷惑で……。
思い返せば、自分の機嫌がいい時だけ、気紛れに話しかけていただけだったんだ……。
やはり、シロは死んだのだ。
私はそんなことも知らないで、今まで何の気なしにこの道を往復していたなんて……!
いや、違う!
私は気が付いていた。
シロは本当は死んだかもしれないことを……。
でも、そんなことは信じたくなかった。
信じたくなかったからずっと気づかない振りをしていたんだ!!
どうしてもシロの生死が知りたいなら、飼い主に尋ねればいい。
後から知ったことだが、この自動車整備工場は自宅の敷地に併設されていた。
少しわかりにくい場所だったが飼い主の自宅を訪ね、シロの安否を確認することくらいは、高校生の私でも簡単にできたはずだった。
でも、私はしなかった。
昼間に人がいないとか、家がどこにあるのかわからないとか、色々な言い訳を自分の心の中に勝手に並べて……。
シロは、シロの一生は幸せだったのだろうか……?
一緒に遊ぶ仲間はいない。
飼い主が遊んでくれる訳でもない。
“シロ”という、何の工夫も愛情もない名前を、勝手に自分に怯える女の子に付けられて、それで満足していただろうか?
誰もいない1日の大半の時間をシロは何を見て、過ごしたのだろう?
重い鎖に繋がれて自由に遠出することもできず、ただただ目の前の風景を眺めていただけなのか。
シロが見つめていた風景はどんなだったのか。
私はその夜、眠れないままベッドの中でシロのことを考え続けた。
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