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長い夏休みも終わり、また坂道の下にある格納庫の前を登下校する毎日が始まった。
高校生活はそれなりに充実していたが、登下校の道のりはさして楽しいものではなかった。
シロがいた頃はドキドキしながらこの建物の前を通り、ワクワクしながら話しかけていたんだ。
そんなことに今頃気づく。
そんな日々がしばらく続いた9月のある日。
シロの代わりに新しい犬がやって来たのだ。
ようやく残暑も和らぎ始めたその日、私が例の建物の前を通り掛かると見知らぬ犬が立っていた。
犬小屋も元の場所に戻り、鎖で杭に繋がれていた。
ここの飼い主はよほど白い犬が好きなのか毛色はやはり白。
しかしシロとの共通点は色だけで、新人の番犬は何から何まで、シロとは正反対だった。
まず、体格がかなり小さい。
シロの二分の一か、三分の一くらいしかない。
しかも、かなりのやせっぽちだ。
4本の足はほっそりとして長く、コロコロしていて走るより転がった方が速そうなシロとは大違いだ。
その上、短毛でシャープな体のラインは、あばら骨の位置まではっきりと見える。
ふさふさモコモコして、肝心な顔がどこにあるのかさえわかりにくかった、シロとは全然違う。
唯一シロと同じところは、初対面の私にまったく吠えないことだ。
尖った三角の耳をピンと立て、黒くて小さな瞳で私を見つめてくる。
そして、ゴボウのような細くて頼りないしっぽをゆらゆらと振っているのだ。
だが、私はその犬の姿を見てカッとなった。
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