5杯目

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紗弓に直接マスターのことが好きだとか、つきあいたいだとか、言ったことはないけど、 わかってるよ。 大丈夫だよ。 と言ってもらった。 紗弓だって年の差と戦っているのだ。 大好きな人とずっと一緒にいるために、色々と我慢もしている。 寂しさとも戦っている。 桐谷さんを狙っている女たちはごまんといるし、そのほとんどは私たちより年上で、美女で、やり手ばかりだから本当に気が抜けない。 まだ学生の身分の私たちは、大人から見れば親の脛かじりのお子様でしかないだろう。 でも…… お子様にだって意地も勝機もあるんだから! 茉由は気合い充分での入り口ドアを開けた。 ドアベルの音にマスターと紗弓が「いらっしゃいませ」と反応するその瞬間、一番の笑顔でいられるように茉由は心掛けている。 「茉由、いらっしゃい」 店内を忙しく歩き回りながら紗弓が笑顔で言った。 そしてカウンターを見ると、 「茉由ちゃんいらっしゃい」 いつもと変わらない優しい微笑みで市成が茉由を出迎えた。 ーーやっぱり好きだな。 定位置であるカウンターの一番右端に座りながら、そう思う。 「茉由ちゃん、いつものにしますか?それとも気分を変えますか?」 「いつものをお願いします」 「かしこまりました」
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