1杯目

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***** 「紗弓、そのカーデ素敵」 「秋だねー」 大学の中庭のベンチで本を読んでいた紗弓は、友人たちに呼ばれて顔を上げる。 その拍子にゆるくウェーブのかかった長い黒髪がサラリと揺れた。 「 道ゆく男子が見惚れてるよ」 紗弓の両脇にそれぞれ腰掛けながら友人たちが言う。 「綺麗なボルドーだね。そのカーデどこで買ったの?」 友人が言っているのは紗弓が着ているボルドー色のカーディガンのことだ。 カーディガンの下は同色同素材の半袖ニットカットソーで、セットでもバラでも着られるアンサンブルだ。 黒のロングタイトスカートと合わせたシンプルなコーディネートだが、スラリとした細身で、長い髪の紗弓が着るとこなれてみえる。 「これ、もらったものだから」 紗弓の言葉を聞いて友人ふたりは顔を見合わせる。 「彼からのプレゼント⁈」
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