1杯目

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紗弓がうなずくと、ふたりはくぅーッと感嘆の声をあげた。 「紗弓のことよくわかってるよねー。すごく似合ってるもん」 「ほんと。ひと目でいい品だってわかるよ。シンプルだけど高そう」 「いいなぁ、大人の恋人からの贈り物」 ふたりにベタ褒めされて紗弓はくすぐったそうに笑いながら言う。 「やっぱりボルドーとかワインレッドって言うよね、この色」 「うん、そうだね」 紗弓は今度はおかしくてたまらないという顔で笑った。 「なになに」 友人ふたりは不思議そうに紗弓を見る。 「今朝お母さんがね、この服のこと葡萄色って言うから」 「ぶどう!」 「確かにぶどうの色だね。紗弓のお母さんらしい」 紗弓の母の人柄をよく知っているふたりは納得の表情で頷いた。 「でも、なんかいいね。葡萄色っていうの」 「うん。なんか可愛い。ちょっと美味しそうだし」 「秋っぽいしね」 3人は紗弓のカーディガンを見つめながら笑い合った。
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