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大学の最寄駅から電車で二駅の場所に、紗弓が高校生の頃からバイトをしている喫茶雨音がある。
駅から少し離れた公園のすぐ横で、緑に囲まれた静かな店だ。
外観は煉瓦造りの洋館で、通りを見渡せる大きな窓と緑の蔦が印象深い。
紗弓が飴色に光る重厚な木のドアを開けると、カランカランと真鍮のドアベルが鳴って来客を知らせた。
「紗弓ちゃん、おかえりなさい」
カウンターの中から背の高い紳士が、柔らかい表情とよく響く落ち着いた声で出迎える。
「ただいまマスター。今日は茉由も一緒です」
紗弓の後ろから顔を出して茉由がぺこりと頭を下げる。
「茉由ちゃん、いらっしゃい」
使い込まれ、よく磨かれた調度品とアンティーク家具で整えられた店内には、ゆったりとした時間が流れている。
カウンターの上にも、棚の中にもたくさんのサイフォンと、柄や形の違うアンティークのコーヒーカップやティーカップがずらりと並んでいる。
紗弓はカウンターの奥にあるドアから従業員の控え室になっている部屋に着替えに行き、茉由はいつもと同じようにカウンターの一番右端の席についた。
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