潮味のミルクティー

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 前のバイト先で仲良くなった新谷(にいや)さんは面倒見のよい、人たらし特有のつかず離れずの優しさを持っている少し年上の男の人。 身長の割に声は小さくて、筋肉質でもなく脂肪もないけどガリガリではないふわふわした男の人。 そして人付き合いが得意とは言い切れない私の心を初手でがっつり掴んできた男の人。 柔らかい声に度々酔いそうになるけれど、電波に乗った音声だと言い聞かせてなんとか正気を保っている。 就活をしようと思っていた私がバイトしていた雑貨屋で彼は店長に最も信頼されている社員だった。社員ぽくないフランクさと話しやすさにバイトの子はみんな新谷(にいや)さんのことがすきだった。 店を辞めるまでは時折飲んでいたけれど、最近こうして通話で気まぐれに近況を報告しあうことがほとんどだ。 「そういえばどうしました、プロポーズ大作戦パート3」  パート3は余計やんな、と背後のにぎやかな雑音と混ざって得意の引き笑いが聞こえる。動画配信でも垂れ流しているのだろう。 「え、植木さんちもテレビないん。いらんよな、動画あるし」  それが新谷(にいや)さんと交わした最初の会話だからだ。飲み会で家に行ったときも、やはり部屋の中にテレビはなかった。 「今度こそって言ってましたけど?」 「うん。うまくいった」
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