1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
私が小学四年生の時、両親の都合で都会から田舎に引っ越しました。新学期に合わせて編入しましたが、元々人見知りということもあり、中々新しい友達を作ることができませんでした。
そんなある日のこと、私は両親に内緒で学校をサボりました。ランドセルを背負いながら、人気がない場所を探します。ランドセルを背負った子供が彷徨いているのは不自然だからです。だから、なるべく人が来ない場所へと足を進めました。そしてたどり着いたのが、小さな神社でした。それはすっかり寂れていて、手入れをされた様子もなく、草も生い茂っていました。きっと、ここなら誰も来ない。そう思った私は、学校が終わる時間になるまでここにいることにしました。その間、神社の中を覗いてみましたが、廃材と瓦礫の山があるだけで、面白いものは見つかりません。結局、ここにいてもやることはなかったのです。どうしようかと考えていた時、声が聞こえました。
「なにしてるの?」
目の前には、金髪の綺麗な少女がいました。私よりも少し幼い少女は、興味津々そうに私を見ていました。
「おねえちゃん、げんきがないの?」
「げんきがでるもの、おねえちゃんにあげる!」
少女はスカートのポケットから、小さな袋を取り出した。
「あけてみて!」
少女がそういうので、袋を開けてみました。すると、そこから色鮮やかな金平糖が出てきました。
「あまくてげんきがでるよ!」
少女は屈託のない笑みを浮かべます。しかし、私は少女の行動に目を白黒させるばかりでした。金平糖を食べるか悩んでいると、動物の鳴き声が聞こえてきます。何の動物かは分かりませんでしたが、鳴き声を聞いた瞬間、少女が「あ!」と声をあげました。
「いかなきゃ! ばいばいおねえちゃん!」
少女は嵐のように茂みの中へと去ってしまいます。私は思わずその後を追いかけようと茂みへと入りますが、少女はいませんでした。その代わり、遠くの方で小さな狐が走り去っていくのが見えました。それは、少女の髪色とよく似た、金色の毛を生やした狐だったのです。
あの少女は狐だったのでしょうか? それを知っているのは、金平糖だけでしょう。
最初のコメントを投稿しよう!