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「な、なんだね! 君は? 人の家に勝手に侵入してきて! 警察を呼ぶぞ!」
打った腰を擦りつつ、伯父様は斗真さんへ食って掛かる。確かに登場の仕方は不審者であり警戒心も剥き出しになるだろう。
「ご挨拶が遅れました、峯岸斗真と申します。姫香さんとは結婚を前提にお付き合いをさせて頂いてます」
「峯岸……斗真? 帰国していたのか?」
浅田さんといい、伯父様までもが彼の名に怯む。
「えぇ、彼女が別の相手と結婚すると言うものですからすっ飛んで来た次第です。浅田さんとも先程お話をして、姫香との結婚は無かった事になったはずですが? お耳に入っていませんか? あぁ、もしかして浅田さんが伝え忘れたのかな? 都合が悪い件は隠蔽する性格ですし」
「そ、それは……」
「それから庭で花を愛でていたら聞こえてきたのですが、諸々の補償は峯岸が責任を持って対処致します。姫香のお父様の復帰も我がグループでバックアップしますのでご安心下さい」
ちなみに庭で花を愛でていたのではなく、事態に割り込む機会を狙っていた。私の身に危険が及ぶと分かるなり、飛び込んできたのが証拠だ。
あの峯岸グループが後ろ盾となると宣言すれば伯父に返す言葉はない。よって残される道はーー保身だ。
「いやいや、姫ちゃんが峯岸の御曹司と気持ちを通わせていたなんて。姫ちゃんは何も言わなかったものですから。私もね老婆心ながら浅田さんを紹介しただけで、峯岸さんという方がいると知っていれば仲人などしません。はは、これからは親戚同士、仲良くしましょう」
へらへら媚びへつらう様に怒りを覚え、伯父様の元へ駆け寄る。
「私が世間知らずで、伯父様のような人に付け込まれたのが悔しい。もう私達に関わらないで!」
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