480人が本棚に入れています
本棚に追加
「ーーと、未来の妻が言っておりますので親戚付き合いは遠慮します。結婚式も参列して頂かなくて結構です。あなたは未来永劫他人です」
「いや、私は、そのだな」
「大変申し訳ありませんが、これから商談がありまして時間が無いのです。さようなら」
斗真さんは伯父様の襟をむんずと引っ張り上げ、窓から放り出す。裸足で庭へ出された伯父は慌てふためくもカーテンを締めてしまう。
「……さてと」
仕切り直す意味の一呼吸をし、斗真さんは私を見た。髪が乱れ、散々泣いた姿はさぞかし酷いだろう。鏡を見なくても分かる。
「姫香、俺には半日しか、十二時間しか猶予がない。本当の気持ちを教えてくれ。どうして別荘からいなくなった? 姫香の口から聞きたい」
「ご、ごめんなさい、私、私は」
「浅田や伯父様には、自分が思っている事をはっきり言えたじゃないか? 俺には言ってくれないの?」
「言っても、いいんですか?」
「姫香の気持ちが聞きたくて、ここまで追いかけてきたんだ。あぁ、姫香の家、懐かしいな。昔はよく遊びにきた」
斗真さんはぐるりと室内を見回し、壁の家族写真に目を留めた。
「俺は姫香より少しだけ姫香のお母さんの記憶がある。お母さんはよく窓辺で花を眺め、読書をしていた。俺が両親に構って貰えないのを可哀想と思ったんだろう。童話を読み聞かせてくれ、俺はシンデレラの話を一番気に入ったんだ。なにせシューズメーカーの息子だからな」
最初のコメントを投稿しよう!