傀儡子の少女

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 これまで戦闘員として傀儡子を作ってはいなかったので、同時に操るための呪符も作っていなかった。砦を根城にする時に作るべきだったかもしれない。またこれから追っ手が来るのならば、今度こそ作らねばなるまい。 「ひ、つ、よ、う、だ、た。必要だった。うん、そうだよ。あの時は君にああしてもらうのが自然だったんだ。ありがとう。理解してくれて嬉しいよ」  これまでランドールが傀儡子を自分のために使うのは自分が力尽きて動けなくなった時に運搬させるのがほとんどだった。  死ぬ前に術をかけて傀儡子となったイライザは魂が強靭なポルポワズ導師と同じくらいしっかりと本人の意思があるものだから、今回は遠慮して馬車を買ったが、基本的に金のかかることはしない。魔道士として追われる立場では働くための手形が使えない。お金を工面するあてがないのだ。  実のところ、ランドールだけであれば野宿で構わないくらいだった。そして宿をとるくらいなら馬車で寝起きする方が金銭的には良いのだが、目くらましをかけても不審な馬車が人目に着く可能性は面白くない。それは少女を連れての野宿も同じ理由で避けたい。  どうせ眠らない傀儡子なのだから、イライザに背負ってもらって夜通し走らせるのも良いかもしれないとぼんやりと思ったが、小柄な少女の身体があっという間に壊れてしまうだろうと思い至って、バカな自分の思考に苦笑いして首を振った。  イライザがポンポンとランドールの肩を叩いた。 「で、か、け、て、いい。ああ、良いよ。あ、これをあげよう。呼びかけたい時に使ってもいいし、何か困ったことがあったら使え。どんなに離れていても即ちに駆け付けるよ」  金色の房飾りのついた根付を差し出した。 「さっき出来上がったばかりだからうまくいくか確かめないとね。さあ、持って、こうしてここをこすると…」
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