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冷たい空気で気持ちが落ち着くのではないかと思ったが、答えの出ていないことが次々に巡って悲しくなるばかりだった。
月はだいぶ丸くなっていて、ちゃんと暦を数えていないが数日後には満月だろうとぼんやりと思う。
イライザはこの月明りの中で客を探したのだろうか。
お金に困っている自分を見て助けたいと思ってくれてのことだろうとはわかっていた。
それでもどうしようもなくやるせない気持ちになった。
レント育ちで船乗りたちの乱交を目の当たりにしてきたランドールだ。人を誘い惑わす方法も知っていたし、エスメラルダ人のような潔癖さは持ち合わせていないが、イライザがそれしか金を稼ぐ方法がないと思っていることが悲しかった。そして実際、手形なしで稼げる方法が他にないこともよく知っていた。
かつて自分がそうしてきたのだから。
だが、ランドールとイライザの大きな違いは、虫が肩代わりしてくれていたかどうかの違いだった。ティナを付いていかせるべきだった。
自分がそうしてきたように色を買いたい人を誘うだけ誘い、自分と致していると錯覚させて虫に仕事をさせればいいのだ。
しかし、それは虫が自ら申し出てしてくれていただけで、ランドールが命じてさせていたわけではなかった。
ティナの意思はわからない。
部屋に戻るとポルポルに聞いた。
「どうしてポポは僕の代わりをしてくれたんだい?」
先代の虫はランドールの下半身に潜んで男のそれを咥え、女の中に潜り込んでいた。
「船乗りがあまりに不潔だったからさ」
「それだけ?」
「ああ、それだけだよ」
「…僕は無駄に童子を守ってしまったから、捧げるべき相手もわからないや」
イライザが傀儡子になっていなかったら抱けただろうか?
想像できなかった。
魔道は精力も、体力も、魔力も、何もかも消耗する。魔道を使うようになってから、性的欲求などとうに感じなくなってしまっていた。
性欲を感じないせいか、人を好きになるということがどんなことかもよくわからない。
「ああ…、僕はこのまま誰かと繋がる喜びを知らないまま死ぬのかな…」
「口づけくらいしたことあるだろ?」
「え?」
いつかの感触が唇に蘇った気がしてドキッとする。
ポルポルの言葉を聞いて、イライザがニコニコと近づいてきて唇を差し出してきた。
「初じゃなきゃいいって話じゃないよイライザ! 僕の口の中の雑菌が君に入ったらまた洗浄しないとならないんだよ、面倒じゃないか!」
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