手首の傷に花丸を

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手首の傷に花丸を

 朝、3回目のアラームで目を覚まし、ベッドから身を起こし、思い至った。  今日は特別な日。  私は、起床後にやるべき様々なことをやろうとする。一日の始まり。その中で、ボンヤリと思考する。ああ、私は今日まで生き延びたのか、と。  洗面所で歯を磨きながら、鏡の中の女を眺める。短い黒髪。少年のような顔。  口の中のものを吐き出す。口の中を洗って、呟く。 「頑張って生きてきたな、私」  長袖をめくって、両手で顔を洗う。  ふと、左手の手首が視界に入った。  自傷行為の傷跡が残っていた。  手首の傷跡は、基本的には消えない。入れ墨みたいなものだ。もう、10年とか前の話、か。  なんとなく、昔のことを思い出す。10代と20代。  気まぐれに「地獄のような日々だった」なんて言うけど、でも、私は人並みの幸福も体験したのかもしれない。――ここまで、生き延びた。
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