手首の傷に花丸を

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 ミナトが帰宅した後――午前0時の少し前。私はアパートの屋上にいた。手すりを掴んで、地面を見下ろす。ここを越えたら、私は死ぬ。  空を見上げる。星のない空。秋の夜風は冷たい。  ずっと思っていたことがある。「青春時代が終わるなら、生きる理由なんてない」「30歳の誕生日で、世界は終わる」  だから、私はずーっと、30歳の誕生日に自殺しようと思っていた。どうせ、生きるべき積極的な理由などない。  私は手すりに寄り掛かる。もう少し、身体を動かしたら。  ふと、記憶がよみがえる。  手首を、必死に傷つけていた10代と20代。それでも生き延びた青い時代。ミナトと出会って、彼と一緒にいたこの一年。――生き延びた。  なんとなく、笑ってしまった。 「お前、頑張ったな」
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