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アミズマ、ガメ、イヌユ、プネコによる男二人、女二人の混成グループ。
スタッフは他におらず、企画、撮影、編集もグループメンバーで分担してる。さほど儲かってるとは言い難いが活動を続けられる最低限の収入は得られていた。
あえてリーダーは立たせてないが、我が家の一室を撮影所として使ってる都合上なにかとアミズマこと俺が仕切ることが多い。自宅兼撮影場所ということもあり、鍵はメンバーに渡してないない。交流のある他グループにも撮影所の住所は秘密にしていて、このルールはメンバー間でも絶対厳守だ。コラボで誰かを密かに連れきてサプライズ演出としたいのだろうが、信頼を損なう行為で大問題である。
とはいえだ。視聴者に内輪もめを見せるわけにはいかない。ルール破りを諫めるのは後にして正体暴きゲームを優先することにした。
「いいだろう。まずはいつも通り、正体を暴いていこうか」
俺が話を始めて以降、他の誰も声を出していない。
棚の上のカメラがランプで配信中であることを告げているが、みな慎重になっている。
このゲームはひとつひとつの発言が致命的になることを心得ているようだ。
「お前の正体はわかってるぞ。」
口火を切ったのはパンプキンヘッドだった。顔を動きでは話をしていることはわかったが、声はボイスチェンジャーを通している。
パンプキンヘッドが顔を向けている相手に、俺も言葉を被せる。
「女であることは間違いないな」
魔女。この中で一番当てやすそうな相手だ。
女装という可能性も捨てきれないが、これみよがしに見せつけられた足、体格の様子からして、女性であることは見て取れた。
ふふ、と少し笑いながらゆっくりをとんがり帽子を持ち上げる。
唇には鮮やかな紅色の口紅ひかれ、妖しげな雰囲気を醸していた。
目元は蝶をあしらったような黒いレース状のマスクで素性を隠している。
魔女は手元からスマートフォンを取り出して操作を始め、機械的な人工音声が彼女の代わりに声をあげた。
「何か証拠でもあるの?」
パンプキンヘッドが肩をこれ見よがしに上下させて応じる。
「くっくっく。かかったな。今のはワナだ。」
魔女は一瞬「えっ」と小さく声をあげ、よく手入れされた指で忙しそうに操作を続けた。
「どうゆう意味?」
「声を出せない衣装を選んだ場合、スマホを通じて会話するしかない。毎年そうやってたな。しかしこれには一つ欠点がある。わかるか?」
「わかんない。もったいぶらないで。」
「指だよ。手袋したままじゃ操作できないからな。スマホ操作できるタイプのものもあるけど、今まで誰も気にしてこなかっただろう。だからは俺はここ最近、みんなの指に注目してたんだ。特に女性のネイルは近くでしっかりね。イヌユはピンク色のネイル、プネコは真っ赤なネイル。そしてお前は・・」
魔女がハッと気づいたように自分の指を眺めた。
五指に赤いネイルが光る。
「赤。つまりお前はプネコだ!」
「あー、もう。やられたっ!」
観念してとんがり帽子脱いでマスクをとると、素顔が露わになった。これなら誰だかわかる。
彼女は情報のカメラに向かい手を振った。
「はーい。最初にバレちゃったのは私。魔女のプネコさんでした~」
その傍らで俺はニヤリと笑った。
「で、次だが・・パンプキンヘッド。お前もひとつミスしたな」
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