化け物はこの中にいる

ドカン、と大きな音と衝撃の記憶。
頬、手、体中に伝わる道路の冷たい感触。
それに反するように内側からは熱い液体がこぼれ出る。
ぼやけた目に映る猛スピードで走り去る車の後ろ姿。

（配信）

配信前のちょっとした買い出しだった。
早く戻らなければメンバーが集まってしまう。時間までに戻らなければ。
ヨロヨロと立ち上がり、ハンカチで頭を押さえる。足を引きずりながら歩く。
家のマンションはすぐそこだ。

（ハロウィン）

片手でポケットをさぐって鍵を取り出し、オートロックを開ける。
身体に生暖かい液体が流れるのを感じるが、幸い下に滴るほどではない。
エレベータに乗って、部屋に、撮影場所に辿り着く。本日のパーティ会場だ。

（化ける）

棚に向かい、セットしてあるカメラのスイッチを入れる。
機械との接続も問題ない。配信中のランプが点灯する。
配信開始。

力が抜け、壁にドッと身を預けるとそのままズルズル座り込んだ。
合わせるようにして、これまで抑えていた血がブワっと顔に流れ込む。
力を振り絞り、震える両手で血を顔に塗りたくる。

（ほら、ゾンビだ）

程なくして誰かが部屋に入ってくる。
小さい悲鳴があがったが、恐る恐る踏み入れて椅子に座った。
また誰かが入ってきた。一瞬たじろいたあと、黙って入口の横に立った。
最後の一人が入る。部屋を見渡してうんうんと頷き、部屋の奥に進んで立つ。

メンバーがそろった。俺は。
そうだ。今日はゴーストに化けるんだった。白い布かぶって。
今日もどうせ俺が仕切るんだろうな。
俺が仕切ってやらなきゃ始まらないからなぁ。

準備は。お、もうしてあった。
ほら白い。透き通った身体のゴースト。
フワフワ浮いて、揺れてるゴースト。

さあゲームを始めようか。
みんなは何に化けたのかな。
ゴースト、パンプキンヘッド、ゾンビ、死神、魔女。

うん・・？

5人・・・・？