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1、土田 努
うだる暑さがひとまず過ぎ去り秋が始まったかと思うともうハロウィンが終わり、季節は11月に入っていた。
「今年の季節は狂ってるね、11月なのにまだ半袖でいけるよ。」
いつも利用する喫茶店で友達の綾音が言う。
「うん、そうだね。」
美穂はクリームソーダを飲みながら相槌を打った。
立川 美穂(たてかわ みほ)は都内の私立高校に通う1年生。今年晴れて第一志望の高校に進学した。友達の星野 綾音(ほしの あやね)は中学時代からの親友で、綾音も同じ高校の同じクラスだ。
「はぁ~、あっという間に1年生が終わっちゃうよ。早くイケメンの彼氏ゲットしなきゃだよ~。」
綾音はそう言うとケーキを一口頬張った。
正直綾音は可愛い。クラスでも何人かの男子にアタックされていて、それをすべてやんわり断っていた。理想が高いというやつだろうか?
「綾音はどんな人がタイプなの?」
「チャラくなくてケチじゃなくてヒエラルキーのトップに立とうと努力してる人かな。」
そんな男子がどこにいるというのだろう。
「ねぇ美穂は?」
「えっ?」
「美穂は居ないの?気になる男子?」
綾音の質問に美穂はドキッとした。
「居ないこともないんだけど、、。」
「えっ誰?誰?」
綾音がとても嬉しそうに尋ねてくる。
「…つっちー。」
「えぇ!土田くん!あの!!」
土田 努(つちだ つとむ)は美穂達の高校に通う同じクラスの将棋部の男子生徒だった。
「ええー!意外。美穂はああいう男子がタイプなんだ。」
綾音が驚くのも無理はなかった。土田はいわゆる女子にモテそうなキラキラした男子ではなかったからだ。でも美穂は土田のあの真面目腐った不器用な笑い方がとても好きだった。
あれは今年の夏、美穂は一人で買い物をした帰りペットショップに立ち寄ったときのことだった。猫のブースからずっと離れない見たことある男子が居た。
「土田くん?」
「あぁ、立川さん、こんにちは。」
「猫見てたの?好きなんだね、猫。」
「うん。昔飼ってたんだ。立川さんは犬派?猫派?」
「私は猫派かな!なんかもうあのおっきい瞳が可愛い~ってなっちゃう。」
それまで土田とあまりしゃべったことがなく、なんとなく暗い印象だったが猫を見つめる彼の目はとても優しそうだった。(ギャップ萌えだな)、美穂は心の中でそう思った。それから美穂は土田を少しずつ意識し始めたのだった。
「じゃあさ、もうすぐクリスマスじゃん?誘っちゃいなよ。土田くんを。クリスマスデート。」
「うーん。でもなんかきっかけがないとなぁ。」
美穂は首をかしげた。
「あ!じゃあ私いい考えがある!」
綾音は美穂にアイデアを伝えると美穂は言った。
「うん!それならいいかも!」
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