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第7話 みかんと家族の幸せな人生
俺とみかんは夏休みを利用して東京に戻った。直接ヘリに迎えに来てもらった。
28階自宅。
「姉貴!」
俺が玄関の扉を勢いよく開け怒鳴り込んだ。みかんは俺の袖を引っ張り渋い顔をして首を横に振っているが俺はお構いなしだ。
「朝っぱらから何?」
姉貴は呑気に短パンTシャツのラフな格好で朝のワイドショーを見ている。
振り向いた顔は吹き出しそうなくらい子供ぽかった。頬を膨らませるほど口いっぱいに食べ物をつめ、口の周りはクリームがベッタリ付いている。
近づいてみると、テーブルには苺のワンホールケーキが箱ごと置かれていて、姉貴はケーキを手前に引き抱え込もうとしている。
横にいたはずのみかんはいつの間にか姉貴の前に座り目を輝かしている。
「ダメ」
姉貴は口いっぱいに入れているケーキを飛ばして抗議した。
俺はため息しか出ない。
姉貴はおもむろにキッチンを指差し頷いた。みかんは更に目を輝かしスキップしそうな勢いで冷蔵庫に向かった。
「紅茶入れてくるよ」
そう言いキッチンに向かう。
「キャー」
みかんの声だった。
俺は剣を出しみかんの元に向かうと、冷蔵庫を開けたみかんが口に手を当て俺の顔を見た。
みかんを引き寄せ冷蔵庫を覗き込むとワンホールケーキの箱がぎっしり詰まっていた。どの扉を開けても同じだった。冷凍庫にはアイスがぎっしり入れてある。
「好きなの持ってけよ」
俺は呆れて紅茶をティーカップに入れリビングに運んだ。
みかんも姉貴同様に口いっぱいにケーキをつめ、幸せそうな顔をしている。
「お前らリスか。いやリスの方が可愛い」
言わなくてもわかるだろう。二人が落ち着くと俺は姉貴とみかんの餌食になった。
「おっほん。さて、まずはお礼を言う」
二人はティーカップを手にワイドショーの後番組を見て笑ったりしている。
「俺の話を聞け!」
「「聞いてるよぉ〜」」
「はぁ」
やはりため息だ。ため息が似合う男になりそうだ。それはそれでカッコいい。俳優にでもなるか。
それはさて置きみかんの養女の話だ。
「姉貴何故みかんを養女に?」
「あ〜あ、それ?」
「ママとパパが決めたから私は知らないよ」
「何だそれ」
「それよか、パパとママが祐司の所に遊びに行くって言ってたよ」
その後は大変だった。
死んだはずの親父とお袋が現れ、秩父で盛大な結婚パーティーが開かれ、俺とみかんは彼女達の気まぐれな行事に付き合わされクタクタだった。
落ち着いた頃、俺達は2頭の牛を買い。それぞれ光太郎と弓と名付けた。
「勇司、赤ちゃん生まれたよぉ」
待望の牛の赤ちゃんが生まれた。
「うちもそろそろだな」
「ふふふ。可愛い子が産まれるといいなぁ」
みかんはお腹を摩りながら微笑んでいる。
『幸せだなぁ』
俺はつくづく思う。
牛の赤ちゃんは夢と名付け、程なくして生まれたうちの子はももと名付けた。男の子なら未来、女の子ならももと決めていた。ももはみかんのたっての希望だ。フルーツの呼び名を付けたかったらしい。
数年後、ももはスクスク成長していった。
「パパ、あたしも牛さんに乗りたい」
ももは目をキラキラして俺に訴えている。
「もも。牛さんは乗る物ではないよ」
「だってぇ、ママ、牛さんに乗って遊んでいるよ」
「えっ」
暖かい日差しが降り注ぐロッジの窓から牧場を見ると確かにみかんが牛に乗っていた。俺はかがみももの目線に合わせて言った。
「ももも乗りたい?」
「うん」
ももは両手をグーにして思い切り頷いた。
「よし、ももに夢をあげよう」
ももはあっという間に牛を乗りこなし、牧場犬代わりに牛を誘導している。
三人で牛に乗り牧場を散策するのが日課となった。
その後、
三人目は未来と名付け、ももがだっこしながら牛に乗り遊んでいる。
俺は今も光太郎の背に乗り牧場を散策している。
終わり
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