第8話 守りたい大切な人

1/1

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ

第8話 守りたい大切な人

「寝ました」 「よし行くか」 「はい」  僕と木城さんが待機部屋に入ると、俯いている人、そっぽを向いている人がほとんどだった。 「作戦を変更します」 「またですか?」  僕は彼女を睨み話を続けた。 「第二班のみ行きます。第三班と第四班はここで待機していて下さい」 「えー」 「やだぁ」 「静かに。皆さんを必ず現世に帰還させます。だから、我慢して下さい」  僕は隣の木城さんに向かい 「残って下さい」 「おい、お前一人で行くのか?」 「はい。犠牲者は出したくないと言いました」  僕は皆んなを睨んだ。憎みたくはなかったが、心が許さないと叫んでいる。 「仲間割れはもう辞めて下さい」 「こわっ!」 「あの子だけ庇うの? 「ペテン師はおい出せ」  …等、僕はうんざりした。生死をかけているこの世界で何故いざこざを起こすのかと。 「木城さん、よろしくお願いします。場合により…」 「場合によりって、何!」 「あたし達をやるっていうの!」  僕はその人達の言葉を無視した。 「第二班行きます。ついてきて下さい」  木城さんがドアの前で大剣を構えているのを見届けてアジトを出発した。 「皆さん、十人ずつ二列で隊列を作って下さい。新井さん詠唱は大丈夫ですか?」 「ええ」 「申し訳ないけど貴方に掛かっています。そして、スタート地点に着いたら、皆んな彼女にしがみつくぐらいにがっつり離れない様にして下さい。最悪、目眩しを使います。合図したら目を詰むって下さい。さあ行きます」  僕達はゆっくりゆっくり進んだ。 『排除し尽くしたのか?Monsterの気配がしない。おかしい』 「新井さん詠唱を始めて下さい。手と手を繋いで、ギュッと強く。詠唱の最後で貴方は新井さんにしがみついて下さい」  当たりを警戒しながら彼女の詠唱完了を待った。光輝いたのを見届けて、落下地点へ走り出した。 「3、2、1、やはり100%は出来なかったか」  僕は彼女達を受け止めた。 「大丈夫ですか?」 「「はい」」 「走れますか?」 「「走ります」」 「行きます」  アジトに到着すると、木城さんは出発前と同じ位置で大剣を構えていた。 「3人か」 「はい、やはり」 「100%は無理か」 「でもこの人数なら確実です。彼女次第ですが…様子見てきます」 「弓ちゃん入るね」 「はいどうぞ」 「大丈夫?」 「はい。あたし行けます」 「行けるって」 「あたし…」 「もう辞めとけ」  ドアの方へ顔を向けると木城さんと他の人達も来ていた。 「彼女に言わせる気か?」  彼女は俯いていた。僕も俯き顔を上げた。彼女の髪をそっと撫でるとサラサラしていて。守りたいと思える人ができた。 「僕人間では無いかもしれません」 「光太郎」 「だそうだ。戻るぞ」  木城さん含めた人達がいなくなったのを確認し、僕はベッドに座り彼女を抱きしめた。 「あたし、あたし」 「泣くなって。可愛いくないぞ」 「光太郎」  僕と弓は唇を合わせていた。 「お戻りか」 「はい」 「どうする?」  暫く沈黙が続いた。僕は彼女と皆んなを見つめ目を瞑り再び目を開き作戦内容を説明した。 「第三班、第四班とも行きましょう。加賀さん大丈夫ですか?」 「ああ、心配するな」  僕は弓の目線に合わせる為、腰を落として彼女と目を合わせた。彼女は目を瞑り開くと僕の目を見つめた。  彼女が頷いたのを合図にアジトを出発した。 「弓ちゃんの歩幅に合わせて下さい。加賀さん詠唱は大丈夫ですか?」 「さっぱりわからん」 「落ち着いて歩いて下さい」 「弓、最悪お願いできるか?十二人になるけど」 「はい。大丈夫です」 「ありがとう」 「木城さん、降ってきます」 「またかぁ。光太郎どうする?」 「スタート地点に着く前に決断します」  スタート地点が近づいていた。考えがうまくまとまらない。見捨てるか彼女に任せるか。 「光太郎?行って」 「弓」 「あたし大丈夫だから」  彼女の目は潤んでいた。僕は意を決した。 「皆さん、僕離脱します。検討を祈ります」  僕はゆっくり彼女らから離れていきある程度まで進んでから走り出した。  嫌な気がしていて、頭の中がモヤモヤしている。  Monsterの気配がして振り向くと彼女達の目の前に現れた。 「ゆみー」
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加