第12話 光太郎に会いに

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第12話 光太郎に会いに

 あたし達はそれぞれ神官スキルで現世に帰還した。  あたしは転送前に陽奈ちゃんと着地点をねごっておいた。 「陽奈ちゃん、大丈夫?」 「はい、なんとか」 「お昼に待ち合わせして美幸さんの所に行きましょう」 「分かりました」  陽奈ちゃんと別れて自宅に着くとパソコンでプログラミングを始めた。自動でキャラを動かすプログラミングだ。  次にポータブルゲーム機の待機状態を解除してmenu画面を開いた。 「キャラにブーストスキルを付けてと。後は パソコンとゲーム機を接続」  ゲームをスタートすれば、自動でキャラが動き、ひたすらMonsterを討伐してくれる。 「なんて便利な世の中になったのだろう。半日あればレベル100まで上がるかなぁ。それまでに出来ることはやっておきたい」  「グゥ」とお腹がなった。 「その前に腹ごしらえ」  『レンジで温めるご飯』をレンジに入れワット数と時間をセットしスタートボタンを押した。冷蔵庫から卵を二、三個取り出し、フライパンに落とし薄く伸ばす。温めたご飯にケチャップ、調味料を入れ軽く炒めた後、薄く伸ばした卵でご飯を包みオムライスを作った。 「美味しい。朝食はこれね」  洋服を着替え洗濯をしている間に、浅海さんが流した生配信の録画を入手して再生した。 「成程」  洗濯したものを干し電話をかけた。 「もしもし、うん。これから。じゃあお願い」 電話を切るとバッグにスマホと財布等を入れ、待ち合わせ場所に向かった。 「お〜い、陽奈ちゃん」 陽奈ちゃんが気づきあたしの所に小走りしてくた。 「こんにちは」 「待った?」 「ううん。さっき来たばっかだから」  彼女は微笑んだが直ぐに真顔に戻った。 「美幸や沙知に電話したけど繋がらなくて」 「そう。どうする?」 「南君の所に行くことにした」 「わかった。行こう」  光太郎のご両親に説明をして、彼が安置されている保管庫に案内してもらった。 「光太郎」  彼は白装束の姿で簡易ベッドに置かれている。 「中に入っても良いですか?」 「どうぞ」  あたしは光太郎の手を取り顔を撫でる。呼吸もしていて暖かい。彼の手をあたしの頬に当て彼の温もりを感じて、涙が頬を伝い彼の手に流れた。  彼の指が微かに動いた。あたしは静かに彼の手を置き部屋を出た。 「あの、光太郎はどうなんですか」  光太郎のご両親が私を見てそう言った。困惑する気持ちは痛い程わかった。 「はい。光太郎君はただ寝ているだけですから問題ありません。ただ」 「ただ?」  あたしはどう説明をすれば良いか考えたが、良い答えが見つからずそのまま伝えることにした。 「彼の意識はゲームの中に存在しています。彼を現世に連れ戻すことはまだやっていません。彼が頑なに断っていてどうする事もできないのが現状です」 「光太郎が戻りたく無いと言っているんですか?」  光太郎の父親は今にもあたしに食ってかかりそうな感じだった。この現実離れをした状況は彼らには理解できないだろう。  あたしは一つ提案をした。 「あの、彼にお手紙を書いてもらえませんか?無理に帰らせる様なお手紙でなく、彼が懐かしんで自分から帰ってきたくなる様なお手紙が良いです」 「分かりました」  あたしは、光太郎が使っていたゲーム機を借り、お手紙を預かる約束をして、陽奈ちゃんと施設を後にした。 「陽奈ちゃんありがとう。彼の状況がわかったわ。あたしも模索してみる。美幸さんから連絡が来たら教えて」  あたしはそう言い自宅に戻った。あまり時間がない。あたしのゲーム機を手に取り状況を確認したがレベルは80だった。 「レベルが思った以上に上がらない。先に彼のゲーム機から情報を入手しよう」  彼のポータブルゲーム機とパソコンを接続し、全ての情報をダウンロードした。  ゲーム機の待機状態の解除を試みたが解除できなかった。 「直接光太郎に聞くか。彼のご両親との約束まで2日ある。一旦彼の元に行こう」  あたしは転送スキルでアジトに戻った。
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