第2話 あたしの決意

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第2話 あたしの決意

「緊急取締役会を開きたいから招集してもらえる?」    秘書の足立みさに調整してもらい、夢を連れて取締役会に出席した。  場内はざわめいていた。緊急取締役会は滅多なことがなければ開催しないし、夢を連れて会議に出席するなどあるべきではない。しかし、状況が状況なだけあって夢を連れて開催する事を決意した。 「えー、急な招集にも関わらず集まってもらいありがとう。今日の議題ですがご存じのとおり、私事ですが仕事と家事と学業をやりくりするのが難しいと判断して、みなさんのご意見を頂きたいと思います」   あたしは幹部の顔を一通り見まわし足立に合図をした。  プロジェクターを起動して現状の業績を報告する。 「先月末時点での収支です。昨年に比べ利益は伸びています。次は事業毎の推移です。新規事業を立ち上げているので今期の収支を月毎にプロットしました。ゲーム事業に波があり安定していません。そして各事業の進捗です。各企業との提供もありプロジェクトが毎月増えて来ています。そのためプロジェクトの見直しが発生し納期が遅れているプロジェクトもあります」  あたしはここまでの説明で一旦区切り役員達の顔を見る。 「そこで各役員はプロジェクトに参加して問題点の洗い出しをして下さい。改善点を幾つかまとめて来週報告をお願いします。総指揮は副社長の松永さん宜しくお願いします。それとゲーム事業ですが、あたしが直接指揮して来ましたが、これから紹介する人に指揮をとってもらいたいと思います。木城裕也さんどうぞ」  木城裕也が会議室に姿を現すと会場内がざわめき始めた。 「みなさんお静かに。まだ仮採用ですが、部長代理に任命する予定です。実績により役員に昇格する事も考えています」 「社長、ちょっと待って下さい。彼は我が社を陥れた張本人ですよ」 「「そうだ。そうだ」」  ヤジが飛ぶ。    社員にとっては会社の敵だと批判が上がるのはわかってはいたが、ゲーム業界で名を挙げて来た彼が適任だと思っている。 「昨年度の業績をおわすれですか?ゲーム事業はダントツでした。あたしは彼が適任だと思っています。本来はあたしが継続すべきですが、冒頭に話した通りの状況です。来週の役員会で改めて決を取ります。彼の業績で判断をお願いします」 「光太郎様の敵でもあるのですよ」  会場がしーんとなった。 「光太郎様が納得されるとは思いません」 「はい。そうかもしれません。過去の清算をして会社に貢献して行くのであれば、納得してくれるかもしれません。今は業績を落とす事なく、更に伸ばして行く事を考えたいのです。役員の皆さんどうか新たな角度で見て行って下さい」  役員会は終了した。 「弓、成長したな」  兄があたしのところに来た。 「まだ、謝罪を貰ってないわ」 「そうだったな。迷惑をかけた」 「あたしではなく、でしょ」 「ごめん」 「光太郎の所に行きましょ」  あたし達は地下にあるLaboに行った。 「光太郎、待たせたわね。久しぶりになるけど兄を連れて来たわ。叱っても叶わない。彼と話してくれますか?」  あたしは兄に顔を向け指示した。 「光太郎、酷いことをして申し訳なかった。お前の未来を奪ったのは俺だ。本当に申し訳ない。これからは誠意を持って会社に弓と夢ちゃんに貢献して行く。許してくれ」  兄の謝罪は終わった。    あたしは彼に退席してもらい三人になった。 「光太郎、会社運営は難しいね。あたしは早く調査隊に加わって貴方を探したい。再会たい。夢のためにも戻ってこれないかな。泣き言を言うつもりはなかったんだけどごめんね」    あたしは暫く光太郎の手を握っていた。
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