第4話 極秘プロジェクト

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第4話 極秘プロジェクト

「えー、そう言うわけで社長に極秘でプロジェクトを立ち上げた」  壇上に立っているのは久米弓の腹違いの兄木城裕也だ。助手は社長秘書の足立みさだ。  彼女はプロジェクターで映し出すパソコンの操作をしている。 「まずは医療チームから始める」  俺はみさにpowerpointのページを進める様に指示をした。 「医療チームの技術力の数値だ。我が社の医療チームだけあって、他の病院に比べてスキルは高い。しかし、女性が一人もいない。社会傾向として年々女性技術者が増えている。我が社も社会傾向に沿って女性職員の採用を増加している。これが我が社が採用している性別の比率だ」  次々とpower pointのページが進んでいく。 「まだ女性職員は30%だが来年度は20%アップを目指したい」  俺はメンバーの各各をみる。調査チームの中に女性職員もいる。まだ若い。ITチームも設計・建築チームも営業チームもだ。  結婚し子供もできると職場復帰に時間がかかる。その間、新たに採用を考えなければならない。求人募集や面接、セミナーも開催しなければ優秀な人材が確保できない。採用後は技術レクチャー、旧人の指導を経て一人前になっていく。 『どんだけ金をかけなければならないんだ』  俺はプレゼントを続ける。 「女性職員の誰しもが安全に安心して仕事ができる環境を整備していきたい」 「はい」  手を上げたのは医療チーム技術医師の工藤貴文だ。 「木城部長」 「どうした」 「これ社長プレジェクトですよね。カッコつけないでざっくばらんに話し合えば良いんじゃないですか?」  俺の顔が緩んだのかもしれない。出席者の堅かった表情が緩んできた。 「工藤医師の言うとおりだ。まあ、なんて言うか。社長はまだ若い。JKだ」  彼らは頷く。 「JKがだ。社長業を務め、学業に子育て、植物人間の夫の面倒まで見ている。このまま未亡人にさせておくつもりか」 「光太郎様は植物人間ではありませんよ。ただ意識がどこかに行ってしまわれただけで。それに社長が未亡人なんて、言い過ぎではありませんか」 「「そうですよ」」  会場内がざわつき始めた。  みさが彼らを睨め付け静寂を取り戻した。 「ごめん。言いすぎた。しかしだ、社長にこのまま我慢しろとは言えない。そこで女性医師を採用したいと思う。どうだろうか?」  工藤医師が手を上げる。 「何名増員するのですか?ここは24時間体制で光太郎様の容態をチェックしています。それに加えて日中の医師業務を考慮すると最小でも8名は必要です」 「わかった。費用については考えなくて良いから、優秀な医師を当たってくれ」 「はい」  医療チームの課題だけでもどっと疲れ一休憩入れた。 「次は、調査チームだ」  調査チームはフィールドを人類に危害を加えない環境を整備するために調査をしている。  危険生物の調査をし危害を加えそうな生物を確保し生物整体チームで調査して、安全である事を確認した後にフィールドに戻す。  その役目も調査チームが担っている。  場合により危険生物をフィールドで射殺することもある。非常に危険な任務だ。  …… 「と言うわけで社長をフィールドに連れて行きたくない。と言うのは俺だけの意見か?」  手を上げたのはエリート探検隊の今庄淳だ。調査隊の隊長だ。  今庄は高校生の頃にWORLD CUPで優勝した強者であり、オンラインゲーム『X』ではレベル100でもちろんアタッカーだ。いつもcoolで冷静に行動している。女性職員の憧れの的だ。  その彼が顔を赤くして手を上げている。 「今庄、発言を許す」  俺は調査チームには厳しく当たっている。生死に直結している職務だけあって、規律が重要だと思っている。 「はっ!あのぅ」  彼はうずうずしていてはっきりしない。 「今庄!何だその態度は!腕立て100回だ!」 「はっ!」  今庄は席を立ち会議室の隅で腕立て伏せを始めた。 「他に意見をする奴はいるか」 「はっ」  次に手を挙げたのは今野美希だ。今野美希は調査隊長の副長を務め、レベルは今庄と同じだ。 「発言を許す」 「はっ。私も隊長と同意見で、社長をフィールドに出撃させるのは反対です」 「ほう。なぜ今庄が反対だと推測したんだ。言ってみろ」  今野も顔を赤らめている。 「はっ!私、私は隊長を好いています。だから、そう感じたのであります」 「お前らアホだな」 「えっと、アホとは」 「今野!お前も腕立て」 「100回やります」  今野は受診自主的に腕立てをやった。  他の職員も隊員も皆反対意見だった。 「それでは、医療チームは足立秘書と打ち合わせを続けてくれ、調査チームは俺と打ち合わせだ。それ以外は解散!」  長い会議は終了した。
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