第5話 弓の優しさ

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第5話 弓の優しさ

「第二回社長極秘プロジェクト会議を始める。まずは医療チームからだ」  医療チーム主任医師の工藤貴文が手を上げる。 「まずは画面に映し出している資料をご覧ください」  プロジェクターに映し出している『社長極秘プロジェクト』のタイトルから切り替わり、大学病院名と医師名を表示しているシンプルな画面が移し出された。 「非常勤ですが、女医を10名確保しました。杏林大から二名、日大から三名、東京医科大から三名、慶應義塾大から二名になります。何も主席卒業になります」 「費用はどれくらいだ?」 「概算で月300万円になります」  俺は顎の剃り残しの髭を「ジョリジョリ」と撫でながら頭の回転を早くする。 『安すぎだ』 「大学側のmarginも含めてか?」 「いえ、大学側と交渉はしていません。引き抜きですから」 「headhuntingか。それにしても安くないか?」 「週一ですし、当社にとって研修医の身ですから、それくらいが妥当でしょう」 「そうか。わかった。話を進めてくれ」  工藤は次のスライドの指示をし説明を続ける。今週末から来週頭にかけてオリエンテーションを開催し、その後研修の後、研修医として採用する。 「再来週頭から勤務可能です。二勤体制でローテーションを組みます」 「おい、男性医師はどうするんだ。まさか退職とは言わないよな?」  俺は慌てて工藤に問いただした。 「はい。我々はバックアップとして待機室で待機します。現在は仮眠室になっていますが、監視室と同様のモニターを設置して監視できるようにします。そのため、200万円の追加費用が発生します」  俺はニヤッとし目を細めた。 「ちゃっかりしているな。補填費用として使うつもりだな」 「はぁ、まぁそんなところです」  「わかった。見積書を会計チームに回してくれ。後の調整は任せる。納期遅れがないようにな!」 「はい」  俺は次の資料へ指示をした。 「次は調査チームだ。これが社長の基礎データだ。次のスライドを頼む。トレーニング開始からの伸び率だ」 「社長すごいですよ。短期間でこれだけ伸ばせれるんだ。センスが良い」 「レベルは90ですか?」 「その通りだ。しかし、アタッカーではないから大した戦力にならない」  俺は次のスライドの指示をし『極秘』と書かれている資料を表示した。 「見ての通り極秘資料だ。社長の職種にスキルをまとめた。絶対に口外するなよ」 「社長こんなにスキル持っているんですか?」 「ああ、だから『X』Worldで生き残れた。社長でなければ調査チームで雇いたいくらいだ。この通り社長の準備は万端だ」  次の指示をだす。 「数日後に迫った調査の班分けだ。B班及びC班に変更なし。各班長は隊員の確認をしておけよ」 「「はっ!」」 「次はA班だ。俺を先頭に椎名、今庄、社長、今野、結城の五名だ。今庄、今野前へ」 「「はっ!」」  今庄、今野の順に俺の横に並ぶ。 「今庄は社長の護衛、今野は今庄をサポートしろ」 「「はっ!」」 「今庄、今野、一言」 「はっ!自分今庄淳であります。大役しっかり勤めさせて頂きます。社長が無事帰還するようこの命に賭けて実行します」 「自分今野美希であります。右に同じ」 「よしっ!席に戻れ!」 「「はっ!」」  俺は一息つき 「また来週会議を開催する。解散!」  会議室をみさとでてエレベーターホールに向かう途中。 「午後から役員会議か?」 「はい。今回は木城部長にもご出席頂きます」 「ああ、わかっている。まだ社長極秘プロジェクトの話はできないが、ゲーム事業の業績を言わないとな」 「それと、でしょ」 「そうだな。社長の調査隊任務についてだな」 「今庄君と今野さんはどうするの?」 「連れていこうか?」  「社長の護衛だもの。紹介しておいた方がいいかもしれないわ」 「わかった。調整する」  ……  その頃、学校では。  川島美幸と浅海沙知と三人で昼休みの廊下を歩いている。見送りはいつも美幸と沙知がしてくれている。 「弓、今日遊びに行っても良い?」 「私も行きたい」 「いいよぉ。何時ごろになりそう?午後二時から会議があるから、その後であればあたしが案内するよぉ」 「「本当?」」 「うん」  あたしは美幸と沙知さんと約束をして車に乗り込んだ。  足立は相変わらずタブレット端末に目を落としている。 「ねぇ、足立」 「何ですか?」 「今日、学校のお友達が遊びに来るんだけど、あたしが案内してもいい?」 「社長の「いい?」はいつも否定できないですよね?」 「うん。約束しちゃったから」 「はぁ、まずは連絡・相談ですよ」 「は〜い」  あたしはいつも人の話を聞いてないと言われている。確かになんだけどね。 「あっ、そうだ。今日も光太郎とのスキンシップ良いよね?」  今度はまず「相談」している。 「ダメです」 「え〜、どうして?」 「最近、毎日ですよ」 「兄さんが好きにして良いよって言うから」 「はぁ、頭が痛いです」  あたしは足立の額に手を当て、あたしの額に手を当てた。 「熱ないけど薬飲む?整理痛を和らげる薬あるけど」 「いりません!」  足立に強く断られしゅんとなった。
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