第11話 事業拡大

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第11話 事業拡大

「今日の議題は?」  いつもの役員会議だ。  今日はスーツを身に纏っている女性が数人役員用会議室に顔を出していた。  足立がパソコンを操作しながらマイクに話しかける。 「今日の議題はこちらになります」  各自持参のタブレット端末に表示されている画面を見ている役員達を見まわし、あたしは足立に先に進める様指示をした。  始めの議題はフィールド1の建設スケジュールだった。  New World計画時より立案していた柱と言える事業だが、フィールド調査や地盤調査、建設地確保、環境整備、施設建造が当初の計画より大幅に遅れていてスケジュールの見直しをして来た。  現在ではDomeの中にアミューズメントパークを建設している段階まで進んだ。それがこの段階で大きな問題を抱えていると言う。 「どうして今になってわかったの?」  あたしは担当役員の飯島に厳しい顔をして彼の回答を待つ。 「はい。地盤調査がずさんでした」 「それでどうするつもり?」   観覧車を組み立てし実地調査の段階で数度傾いているとのこと。 「他の乗り物は問題ないの?」 「はい。試運転でも問題ありません」 「解体の工期と資材の有効活用ができるか、損失額を算出して報告して下さい。今週中にお願いします」 「流石に今週中はむ」 「貴方の責任でしょ」  あたしは彼の言い訳けを聞く前に命令した。 「各役員は各事業の利益と想定される損失額を報告して下さい。今週中にお願いします。それと先程の観覧車の代わりですが、各自立案をお願いします。あたしはうさぎハウスを希望します」  足立に先に進めるよう指示をした。  次の議題はあたしに関する内容だった。 「この議題は何?」  説明を始めたのは義兄だった。 「はい。こちらの資料をご覧下さい。職員の男女の割合です。先月末時点のデータですが、男性女性比率が7:3です。社会傾向によると女性の雇用率を20%引き上げる。各社足並みを揃え始めています。次のデータが女性の雇用率アップを計画、既に取り込んでいる企業です。当社も来年度から20%引き上げを立案したいと思います。各役員の方には今週中に賛否をお願いします」  義兄は頭を下げて話を続けた。 「次の資料ですが、女性の雇用率引き上げに伴い福利厚生を厚くして行きます。職員の健康管理の面で女性職員の診療施設の利用がほぼありません。利用率及び利用しない理由をまとめたのが次の資料です。調査した中で一番多いのが男性医師に相談するのに抵抗があるとの回答です。そこで女性医師を10名確保しました。次の資料が所属大学病院、担当医師、ローテーション表です。今日一部の医師に来てもらっていますので紹介します」  義兄は彼女達に目配せをすると資料を見ながら話を続けた。 「杏林大から角田薫医師、日大から加藤綾医師、東京医科大学から本谷君江医師、慶應義塾大から石井由美医師、何れも首席卒業です。経費は月3です」  女医達がそれぞれ挨拶をしこの議題は終了した。 「一旦休憩しましょう」  あたしの号令で5分間の休憩になった。あたしは義兄のところに行き女医の話を聞いた。 「これがこの間言っていた事?」 「ああ、お前が光太郎とスキンシップをとりやすくするための施策だ」 「雇った理由はこじつけ?」 「そうでもないが、きっかけはお前のためだ。もう始まるぞ」 「はい。ありがとう」    議題は着々と進み最後にあたしの議案になった。 「続いて社長の議案になります。社長よろしくお願いします」 「はい。それでは次のスライドをお願いします。現在我が社で雇用している技術者と過去数年の雇用数をグラフ化したものです。設計チーム、プログラミングチーム、開発チームを表しています。プログラミングチームの技術者が少なく雇用数は横ばいです。各事業の雇用数と雇用率です。ゲーム事業が一番少なく全体の5%です。新規事業に人手を割いているので当然ですが。次のスライドをお願いします。これが各事業の純利益を表したグラフです。ゲーム事業は雇用率が低い割に利益を上げています。そこで将来の技術者を育成するために」  あたしは役員達を見まわし声高く宣言した。 「パソコン教室を開設します」
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