第15話 家族で初旅行

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第15話 家族で初旅行

 フィールド1のオープンセレモニーの準備は着々と進んでいる。  夢を連れて毎朝恒例の光太郎とのスキンシップだ。 「後一ヶ月でオープンセレモニーだよぉ。楽しみだね。オープンセレモニーの前に社員の人達にも楽しんでもらいたいと思って密かに計画しているんだ。光太郎も行く?」  あたしは恐ろしいまでのオーラを感じ、後ろを振り向くと足立が腰に手を当て鬼のような形相で立っていた。  あたしが目を逸らし光太郎の方へ向くと 「社長、学校の時間です!」 「はい」  旅行の件もあり頷いて石井由美医師に夢を預け足立の後に続いた。  社有車に乗ると足立が言う。 「まだ、旅行も認めていませんよ」  私はそっぽを向いて足立と反対側の窓ガラスから景色を見ていた。ある看板が目に留まった。南国の海だった。エナメルドグリーンの海が綺麗で砂浜にロッジが建てられていた。 「綺麗」 「何がですか?」  足立の頬がほんのり赤い気がした。 「足立の姿だよぉ」  この時はばかりは嘘をついた方が良いと、あたしの感性が言っていた。  あたしは決めた。南国とは行かないが海に行きたい。家族水入らずで海に行き、美味しい海の幸を堪能するんだ。光太郎もきっと喜ぶと。  足立に反対されながらも熱海に行く事になった。  その当日。 「やっほー。海だよぉ〜。夢も光太郎も見て。目の前に海が広がっているよぉ」  熱海のビーチの目の前にある施設にいる。前面全てがガラスの引き戸になっていて視界いっぱいに海が広がっている。  光太郎のベッドはリクライニング式の物を用意して少し起こした状態にしている。 「光太郎のチェックはどう?」  「はい。問題ありません」    熱海旅行に工藤医師と石井由美医師も同行して貰っている。足立は勝手に着いてきたのだが。 「あれ、足立はどこ言ったの?」  石井由美医師が指を刺したのは浴室だった。恐る恐る浴室に行くとビキニを着た足立が出てきた。 「キャー」 「キャーって、足立何をしているの?」  足立はビキニのトップスに包まれている胸に手を当て恥ずかしそうに俯いている。 「あの、あの…」 「始めから来たかったんでしょ」 「はい。社長が誘ってくるないから拗ねていたんです」 「そうね…誘ったらどこに行っても良いの?」 「…はい」 「やったぁ。光太郎ー、足立の許可が降りたよぉ」  あたしも水着に着替えて足立と海でバシャバシャと塩水を掛け合って遊んだ。  あまりにはしゃぎ過ぎたあたしと足立は、部屋に戻ると二人添い寝で寝てしまい、目が覚めたのは翌日の朝だった。  折角の夕食を食べ損ねうだなれながら自宅に帰った。
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