第17話 フィールド1 社員公開

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第17話 フィールド1 社員公開

 オープンセレモニー開催の一週間前。  10時開場の予定だったが、割り振りスケジュールを無視して参加した社員もいてLaboは人でごった返えしていた。  光太郎は既に別の部屋で待機していて、ベビールームは2歳児迄の入室は許可しているが、おむつ替え、授乳、赤ちゃんを寝かせる場所として混雑している。 「夢の部屋がぁ。うぇ〜ん」 「社長辛抱して下さい」 「いいもん。夢の部屋ってデカデカと貼り付けて置くから」  あたしと工藤医師は監視等からLaboの様子を見ていた。そこでのやりとりだ。 「社長、出発を早めないと大変な事になります」  女性医師の一人が言った。 「わかったわ。さっさと挨拶をしましょう」  あたしはマイクのスイッチを入れ社員の日頃の労を労い、父兄には社員を預かっている事のお礼をした。 「じゃんじゃん入れて」 「かしこまりました」 「弓行くぞ。明日予定の社員が集まっている」 「うん」  あたしはLaboと夢の部屋を見て一年近く一緒に過ごして来た思い出を思い出し、項垂れながら義兄の後をついて行った。  明日の社員公開に参加予定の社員は、社員食堂に集まり備え付けのモニター画面を見ながら格格で話していた。  あたしと義兄は彼らの前に立った。    あたしはマイクの前に立ち挨拶をする。 「はい。業務で忙しい中集まってくれた社員の皆さんに感謝致します」  場を義兄に譲るためにあたしは後ろにさがり、項垂れたまま義兄の話を聞いている。 「社員各位に告げる。今モニターに写っている状況はわかるな。明日もこうゆう状況になりかねない。そこで人数制限をし漏れたものは時期をずらす。わかったな」  ………  不平不満が出るだろう事は予想しているが、譲る精神を持っている事を期待するしかない。 「夢様のベビールームでしょ。可哀想」 「光太郎様が休まれる部屋だぞ。あいつら自分のことしか考えていない」  等、殆どが光太郎家族への思いやりが強く、明日の社員公開を諦める社員が出て来た。  項垂れている弓の基に集まり慰めや励ましの言葉を与えている社員が殆どだった。  弓は社員に「ありがとう」と言い、涙ぐみながらも握手している。 『うん?弓はどうして握手しているんだ』 「山本、お前も近くに行って握手したがっている社員に探りを入れろ」 『あいつら、弓と握手したいがための演技か?』 「木城役員、お察しの通り握手が目的の様です。社長はアイドル扱いになっています」 「言い出しっぺは誰だか探りを入れろ」  山本が刺した指の方を見ると吉田だった。 「えー、こちらに注目!みんなの思いはわかった。明日の社員公開は延期にする。以上」  俺は吉田の基に行き 「ちょっと来い」と言い、俺の執務室に引っ張って行った。 「何故、社長と握手した?」 「あつ、はい」  吉田は若干顔を赤らめ言い放った。 「社長が好きです!」 「お前もアホだな」  弓に対する社員の意識は社長ではなくアイドルにすり替わっていた。  俺は焦りを感じ足立を呼んだ。 「役員どうしたんですか?」 「お前が甘やかしているから、弓はアイドル化しているぞ」 「いいじゃない。アイドルでも社員が付いてくるなら問題ないわ」 「お前もグルか」  会社のトップがアイドルなんて馬鹿げている。 「世界一の企業がだぞ」  俺は弓が執務室に戻るタイミングを見計らって、彼女の執務室に入った。
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