第3話 現世への帰還計画

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第3話 現世への帰還計画

「新人を紹介する」  今、仲間の前に立ち話しているのが加賀賢二さん。レベル100だ。 「は、初めてましてっ!」 「固くなるな。いつも通りでいいんだ」  普通こう言う場面は爆笑になる。この人達は違った。暖かい眼差しで僕の話を聞いている。仲間として迎えようとしているんだ。 「はいっ、南光太郎です。都立南小金井高、一年三組です」 「南小金井って、沙知の学校だよね?」 「うん。でも南君の事知らないなぁ」 「いいんです。ここで有ったが何とかって言うでしょ」 「それ違う意味でしょ」  爆笑の渦が巻いた。僕は緊張が解け色々と暴露してしまった。   紹介が終わると一休憩になった。  女の子達が僕の周りに集まり質問攻めになった。 「ねぇ、南君彼女いるの?」 「付き合いたいなぁ」 「趣味とか好きなアーティストとかいるの?」 など、この世界には似合わない言葉。現世で女の子に囲まれていたら、ゲームを辞めていたかもしれないし、美幸と喧嘩する事もなかった。  それにこんな世界に来る事さえ無かっただろう。僕は先程の経験を思い出し手を上げた。 「隊長!」 「誰が隊長だ?」  木城さんと加賀さんが顔を見合わせ首を捻る。 「えっと、加賀さんが隊長かと思ってしまい申し訳ございません」  僕は思いっ切り頭を下げた。 「ゲーマーの基本である所作だな」 「だな」 「よしっ、今は誰が隊長とかは決めていない。毎日の様に人がこの世界に転送されている中で、僕もみんなも困惑している。生きていくのがやっとだ。皆で支え合っているが、僕が経験値が高いからこうして皆の前で話しているだけだ」 「加賀、そういう話なら、加賀が隊長で光太郎が副長だな」 「だな」 「皆んなそれでいいか?不服があるならこの場で言え」 「はい、はい、はいっ!」  皆んなが僕に注目している。 「光太郎どうした?」 「新人の僕が副長なんて無理です」 「そんな事ないよ」 「南君頼り甲斐がありそうだし」 「良いと思う」 「き、ま、りだな」 「ああ、それじゃ今から僕が隊長で光太郎君を副長にします。他に質問が無ければ解散!」  女の子達は僕の所に集まって来た。僕は彼女達に微笑み待って貰う様にした。 「いや、いや、ちょっと待ってください」 「光太郎どうした。役割を決めたかったのでは?」 「ち、違いますっ!」  皆んなが注目する。 「二、三提案がありますっ!」 「でかい声で話さなくても聞こえているよ」  爆笑の渦が巻き起こる。 「あの、先程経験した事から試したい事があります」 「さっきの転送の事か?」 「はい。僕の想定が当たれば、現世に帰還できます」  皆んなの驚きと疑いの目が突き刺さる。 「皆さん、聞いてください。皆さんのレベルとスキル、あまり使いたくないですが、アイテムを知りたい」  僕は周りを見回した。知られたくない人もいるだろう。俯いている人が多い。 「紙を渡します。名前…プレイヤー名でも構いません。それとレベルとスキルは必須有です。できればアイテムも出来るだけ詳細を記入して下さい。お願いします」  追加事項もお願いした。
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