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第3話 家族との溝
役員用会議室に夢を連れて入った。
あたしの隣に座らせタブレット端末を大画面モニターに繋ぎXXのプロモーション映像を流す。夢が華麗にMonsterを狩っている映像だ。
今日はリモートではなく役員、部長を全員本社へ呼んでいる。
「今日は本社に集まってくれてありがとう。定期会議ではないけれど重要性が高いと判断しました。今流れている映像が『X』シリーズの最新作XXです」
役員達の顔色を見て事の重要性がわかっていない様に見受けられた。
「説明をします」
あたしは夢に顔を向け小声で話しかけるが、緊張のあまりガッチガチになっていた。
「えっと、このXXはオンラインゲーム『X』2の改良版です。一からプログラミングしたとは言え、リスクが高いと感じます。『X』Worldの事件は『X』2のある条件を満たすとネットワークを返して専用サーバのデータをダウンロードし実行されます。ゲーム機の小型化カメラで写している情報をデータ化して転送しています。もし」
「社長。わしらに何を期待されているんです?」
「XXはスタンドアロンなのでしょう」
「ネットを返さなければ問題ないのでは?」
「ベータ版を希望者に配るとか」
「パッケージは夢様の御姿になるのですかね」
「夢様のブロマイドを早期購入特典に入れるとか」
チラッと夢を見ると晴れた顔でうんうん頷いている。
あたしはまた頭が痛くなって来た。
「社長、ハッカーの件も確認済みです。特殊なアプリで対応済みです」
木城役員の一言で役員、部長の満場一致で制作続行が可決された。
『目眩がして倒れそう』
役員会議後、光太郎に会いに行った。
「光太郎」
「弓かどうした?」
「聞いてぇ。夢が『X』2の改良版を作ったの。どうすればいい?」
「どうって。スタンドアロンだろ。問題ないだろ」
「光太郎!勘違いしないで。『X』2よ。何かあったらどうするの?」
「何もないよ。あるとすれば魔王復活くらい」
「くらいって。Monsterでも脅威なのに。魔王だったら人類滅亡よ」
「弓心配し過ぎだよ。ちょっとは夢を褒めてあげて。魔王が出現したら俺が行くし」
「うん。そうだけど…」
しっくりこない。
あれだけ辛い思いをして来たのに。
『なぜ?』
光太郎の事がわからなくなって来た。
「弓」
「うん?」
「夢と木城さんを信じてみたら?暖かく見守って上げるのも親の務めだよ」
「光太郎」
「あたしちょっと席を外すわ」
「うん、わかった。夢を呼んで」
「はい」
新Laboを出ると丁度夢が来るところだった。
「パパが読んでいるわ。行きなさい」
「ママ顔色悪いよ。あのぅ、ママが嫌がるならXXやめるよ。他のソフト作れば良いし」
あたしは何も言わずに取締役室に戻った。
「あまり飲みたくないんだけど」
工藤医師から処方された睡眠薬を服用し、自宅に帰りベッドで横になった。
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