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第4話 心機一転 夫二人三脚で頑張ります
「ママ、ママ」
「う〜ん」
「工藤先生、ママが起きました!」
あたしは思い頭を上げ声のする方を見ると、夢が涙をいっぱい目に溜めてあたしの手を握っていた。夢の隣には勇司が座り、光太郎は反対の手を握っていた。
「光太郎、歩ける様になったの?」
「うん。もう大丈夫だよ。自分で歩けるから」
再び夢の方へ顔を向け
「夢どうして泣いているの?」
あたしは夢の涙を拭い頭を撫でてあげた。
「ママが全然起きないから心配で」
工藤医師は石井医師と連携して、あたしの整体チェックをしている。
「今何時?」
「午後9時よ」
「それじゃあまり寝てないじゃないの」
「ママ、一日以上寝ていたのよ」
「えっと、そんなに?」
あたしの記憶は役員会議の後、光太郎に会いに行き、睡眠薬を服用してベッドでそのまま寝てしまった。
『何時に寝たんだっけ』
記憶が曖昧になっていた。
「夢、ママは大丈夫よ。ちょっと疲れただけ。心配いらないわ」
「でも…」
夢はあたしの手を両手で握りしめて、俯き顔を上げると強い目であたしを見つめた。
「XXはの制作はやめる事にしたの。皆さんの了承も得ているわ」
「皆さんて」
「ママが寝ている間に役員会議を開いたの」
「一人で?」
「そうよ」
「…わかったわ。夢、ママね生き死にの戦場の中でパパに劇的な恋をしたの。パパに皆んなにも嘘をついたの。皆んなにリンチされたわ。そうしたらね、パパが助けてくれたの。それとね、パパが魔王と対峙している時、ママは木城おじさんの一味にレイプされそうになったの。その時もパパが助けてくれたの。嬉しかった。そうして子供を授かったのよ。それが夢よ」
私の目から涙が溢れた。一度涙が溢れる留ども無く流れ止まらなくなった。嗚咽を漏らし泣き出した。
「ママ」
夢があたしを優しく抱いてくれた。光太郎も。勇司は「ママうぜえ」と言って抵抗していたが、夢が怒り、結果、勇司も抱いてくれて、家族の思いが伝わり嬉しかった。
「弓、頑張りすぎだ。少し休め。俺もいるし夢も勇司もいる。ゆっくり旅行でも言ってくれば良い」
「会社が潰れるわ」
「社員の人達を信用して欲しい」
あたしは光太郎の目を見つめ頷いた。
光太郎は強く抱きしめてくれた。16年振りに光太郎の温もりを感じ、あたしも光太郎を抱きしめた。
いつのまにか夢も勇司もいなくなっていて、あたし達は久しぶりに愛し合った。
あたしは一週間休暇を取り、夢と勇司は学校を休んで家族で熱海に行った。
「15年振りね」
独り言を言った。
「足立、何しているの?」
「社長、ずるいです!私を誘ってくれるって言ったじゃないですか!」
「15年経っているわ。時効よ」
「そんなぁ」
「そう言ったってちゃっかり来ているじゃない」
「俺もない」
足立は義兄とセットで来ていた。
「ちょっと早い休暇だな」
「兄さん、大丈夫なの。ゲーム事業ほったらかして」
「俺がいなくても困らないさ」
「それなら良いけど。さあ、みんなで遊びに行きましょう」
勇司はみかんちゃんと何処かに出かけ、あたしは光太郎と夢と一緒に海で遊んだ。
15年前に成し遂げられなかった海の幸も堪能できた。
「そう言えば勇司とみかんちゃんは?」
「部屋でイチャイチャしているよ」
「夢なんでわかるの?」
「ママに内緒にしておいてってみかんちゃんが言っていたよ」
「あの二人は!帰ったらお仕置きするわ」
「良いじゃないか。若いんだし。夢の名前を決める的にいってなかった?」
「う〜」
光太郎も夢もあたしの頭を撫でて誤魔化そうとしているが、今日のところは許そうと思う。折角の旅行だし。
「そう言えば俺は学校行くのか?」
「ええ、高校一年生からやり直しよ」
「えー。夢の志望校は?」
「パパと同じ都立南小金井高校よ」
「それだけはやめてくれ。親子で登校なんてあり得ない」
「パパ心配しないで腕組んで登校しないから」
光太郎は夢をジト目で見ていた。
あたしはこの先とんでもない事になるなんて想像していなかった。
旅行から帰宅後、役員会議で光太郎を会長に推薦し、満了一致で可決された。
「これから役員会議をはじめます。南会長、一言お願いします」
光太郎は緊張しながらもしっかり挨拶をした。
『流石あたしの夫だわ』
「それではフィールド1の報告をお願いします」
フィールド1もフィールド2も順調で、フィールド3の計画をこれから詰めていく予定だ。
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