第4話 約束

1/1

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ

第4話 約束

 僕は紙を1人ずつに配り、書いた紙を箱に入れてもらった。選挙の様で自分ながら良い案だと思った。  みんながそれぞれの想いを抱いている中、現世へ帰還するための作戦を練りたかった。 「あの隊長、僕を一人にさせてもらっても良いですか?」 「お前、個人情報を持ち逃げする気か?」 「その箱返せ」  不平・不満を言うのはいつも男性で決まった人達だった。 「あの、皆さんの職業やスキルを確認したいだけですから。少し時間を下さい」 「そう言えば許してもらえると思っているのか?」    僕はため息を漏らさしたかった。  ある女性が前に出て彼らを制してくれた。 「グダグダうるさい。男の癖に文句ばかりたられるな」  その場が静かになった。 「ありがとうございます。30分で良いですから」  僕は木城さんに案内された別室と呼ばれている部屋にある木製の椅子に座り、周りを見渡した。  ここは女性が寝泊まりする部屋だと言っていた。ベッドがいくつかあり、床にはゴザが敷かれている。こんな環境が悪い所で寝泊まりしていたら気が休まないだろう。  僕はitemboxからノートと鉛筆を取り出し、箱に入れてもらった情報をまとめた。  皆んなに書いてもらった紙は炎属性で燃やした。  まとめたノートをitem boxにしまい、皆んなが待っている部屋に入った。 「みなさん、ありがとうございました。先程提案した件ですが、四班に分け順次帰還を実行したいと思います。まずは一班から順に言っていきます…」  発表した班毎に輪になって貰うと一部の人から白い目で見らり、不平・不満を言う人が出て来た。 「説明します。浅海沙知さんを中心に集まっている人達は第一班です。新井まひるさんを中心に集まっている人を第二班とします。第三班は予備です。第四班は男性陣です。第一班から帰還を実行します。もしも転送出来なかった人がいたら第三班に入ってもらいます。第二班も同様です。第三班の帰還が完了したら、第四班の帰還に進みます」  僕の説明が終わると、男性陣が詰め寄って来た。女性達は複雑な表情をしている。  僕は加賀さんに顔を向け同意をもとめた。 「隊長意義ありますか?」  加賀さんは困惑した表情で木城さんに顔を向ける。 「まいったなぁ。木城さんはどう思いますか?」 「良いんじゃないか」  ある男性が食ってかかった。 「木城さん、加賀さん、こいつの言う事を聞くんですか?」 「ああ、そうだ。説明できるか?光太郎」  僕は一呼吸置き話し始める。 「はい。僕は女性優先と考えています。男性は代えが効くかもしれません。女性はそうはいかないと思っています。これは生物学的な話です」 「おい、南!俺達を見殺しにするって言うかよ」 「そんな事言ってません。女性を優先的に帰還させたいだけです」 「お前殺す!」  その人はスッと消えた。    僕は木城さんと加賀さんに向き 「タブーですか?」  二人とも首を横に振った。皆んなが息を呑む音が聞こえた。啜り泣く声も。 「僕探して来ます」  誰の意見も聞かず飛び出した。その後の事は知らない。 『あれほどタブーを使ってはいけないと言ったのに』 「ギャー、助けてー」  居た!  僕はフル装備に切り替え、背後に収めている大剣を抜きMonsterに向かって投げ、次に大弓を取り出して弓を引いた。  ギヤー ドスン  Monsterは倒れ姿を消した。 「大丈夫ですか?」 「くっ!」 「ご無事で何よりです。立てますか?」   僕は手を差し伸べた。パシッと音がして僕の手が弾かれた。 「自分で立てるよ」  僕達は無事帰還し、彼の彼女?が彼に抱きついた。 「お疲れ様」 「いえ、いえ。僕のせいですから。それより夜間でもMonsterが出現しました」 「ああ、可能性は有るな」 「同感だ」  僕は先程の彼と彼女?を見て考えを固めた。 「えっと、先程の彼と彼女さん?ですか?名前を教えてもらえますか。プレイヤー名でも良いです」  彼等は顔を見合わせていたが、彼女が頷き彼が答えた。 「河本章、彼女が椎名祐美」 「ありがとう。椎名さんは確かアタッカーでしたね」  彼女の表情が曇っていくのがわかる。 「伊藤萌さんと班変をお願いできますか?」  伊藤さんも同様に表情が曇った。 「大丈夫です。みんなで帰還しましょう。それと河本さんと椎名さんの他に恋人同士はいますか?」  誰も手を挙げなかった。 「これから帰還の為の方法を説明します」  皆んな僕に視線を向け誰一人とも無我口を開こうとしない。河本さんもだ。  一通り話し終えると第一班の輪に入り、スマホを持っている人を聞いた。  本庄美穂さんだけだった。  僕は本庄さんにノートの情報を写真に収めてもらい、浅海沙知さんに改めて説明した。  神官のスキルである転送の詠唱と詠唱後に記憶が鮮明な場所を頭の中で描いてもらう事に念を押した。 「出発しましょう」  加賀さんと第二班、第四班を残し、僕らは草原のスタート地点に向かった。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加