第8話 弓月みかんと縁を切りたい

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第8話 弓月みかんと縁を切りたい

「ゆうちゃん、どんだけすごいんだよ。可愛い彼女もいるし」 「こうちゃん、みかんの事を言ってんのか?」  「みかんちゃん以外にもお付き合いしている人がいるのか?」 「居ねえよ。そんな話聞かれたらみかんに殺されるぞ」  みかんの気配がして俺は冷や汗を流した。振り向こうにも恐ろしくて振り向けない。 「勇くん、光くん、何の話?」  みかんは指を鳴らしながら俺達の間に入って来た。こうちゃんはビクッとし言った。 「いつの間に!」 「えっと、かなり前だけど」  しかもあっさりと流しやがった。  直前までみかんの気配を感じなかった俺も俺だけどな。まあみかんが怒ってるいないだけでもラッキーだ。  俺達は何時もこんな感じで過ごしている。誤解されては困るが仲良しこよしではない。ビクビクしているんだ。 「明日だね」 「ああ」 「僕応援行くから」 「頼むよ。こうちゃん」  俺とみかんで明日World Cupに行く。  World Cupの話は今度にして、俺とみかんの出会いの話をして行こうと思う。  中学に入学したばかりの頃だ。  早い奴は入学式で隣だった人や小学校からの友達繋がりでSNSグループを作って交流している。  俺はハブられていた。俺と誰も遊んでくれない。  無視されている訳ではなく、近寄りがたい訳でもない。クラスの生徒達と普通に会話するし共同授業も一緒にやっている。  今の中学生の流行りはゲームだ。オンゲーが主流で、スタンドアロン(オフゲー)で遊ぶ奴はほぼいない。  ゲームだけではないが、俺の強さは格別だ。  みんながハブる理由は俺が無敵だからだ。俺と遊んでもつまらないのだろう。 『何せ俺は生まれながらの勇者だからな。はっはっはっ』  ハブられている俺は、ある日の放課後、校庭の高見場(先生方が話をする場所)に座り一人でオンゲーをしていた。 「よっしゃあ。また勝ちだぜ」  無敗の帝王いや、今は死神と呼ばれている。 「久米くん」  高見場の下から俺を見上げている女の子が俺に声を掛けてきた。  弓月(ゆつき)みかんだ。隣のクラスだが良い評判は聞かない。この子もハブられている。俺と同類だ。 「ねぇ一緒に帰らない?」 「嫌だ」  俺は速攻断った。  弓月みかんは運動神経が抜群と聞く。 「よいしょっと」  彼女の掛け声と同時に突然俺の身に不幸が訪れた。彼女は俺の足の付け根に触れ片足を無能にした。 「おい弓月何したんだよ」 「あたし何もしてないよ。久米くん一緒に帰ろうよ」  まだみかんは俺が嫌がる事を言ってくる。しかし俺は既に歩けない体にされた。恐らく足の関節に何かしたのだろう。足の根本から動かない。  俺はみかんに背負われ自宅に帰る事になった。この時点から俺はみかんに支配されて行った。 「お邪魔しま〜す」  みかんはそう言い俺の部屋に駆け込むと俺をベッドに寝かせ、リビングにいるお袋に話に行った。  それから毎朝、下校後、家でご飯を食べ、夕食後はお風呂まで入ってから帰っていった。  それだけではない。みかんは俺にエイチを強要してくる。服を脱がされ彼女の好き放題。彼女に指示されるがままにやっている。  まあ、彼女の機嫌を損ねない限り命は保証されている。それだけでもありがたい。  俺達は何時も一緒にいた。  有る時、みかんにゲームを教えた。俺から離れて行ってもらうための誘導だ。  みかんは強かった。俺とは違うバトルの仕方だが、一瞬で相手のHPを0にした。HPとは整体エネルギーの事を意味する。HPが0になれば死ぬのだ。  みかんは一躍有名になった。アイドルになった。  みかんは単独でフィールドを攻略するのでもなく、他のやつとパーティを組む訳でもなく、俺とつるみたがる。良い迷惑だ。  俺とみかんはeスポーツでも有名になり、World Cupに出場する事になった。
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