第10話 World Cup開戦

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第10話 World Cup開戦

『World Cup第一戦が始まりましたぁー。注目の選手Aブロックでは久米勇司選手と弓月みかん選手です。久米選手はあのVermont社久米弓社長のご子息でゲーム業界で名の知れた選手です。弓月選手は。おっと久米選手の姿が消えたと思いきや、相手選手の顔を手で掴みフィールドに叩きつけ、もう一人は吹き飛ばざれてしまいましたぁ』 「みかん、とどめをさせ」 「ヤダ」 「おい、どうした。タイムスリープ時間は10秒しかないんだぞ。早くしろ」 「だ、か、ら、やだってば!」 「だからどうして?」 「だってぇ、勇司の紹介だけしてあたしの紹介の前に勇司が攻撃したからアナウンスが被ったじゃない!」  俺は放送席を見上げタイムを出した。タイム時間は3分しかない。それに一試合一回だけだ。  俺は審判を呼び耳打ちした。 『おい、俺の紹介はいらないからみかんの紹介を早くしろ。超可愛いは必ず入れろよ。早くしてくれ』  タイムになるとスタート時点に自動的に戻される。 『ちぇっ、つまらない事で無駄な時間を使ってしまった』 「みかん、今からアナウンスしてくれるから気合い入れろよ」 「うん」 『うん?審判、いやみかん選手の紹介をしていなかったとクレームがあり失礼しました』 『ったく余計な事を言いやがって』  俺はチラッとみかんの顔を見ると若干目が吊り上がっている感じがして身構えた。 『Aブロックの注目選手弓月みかん選手は一瞬で相手のHPを削る凄腕の選手です。しかも超可愛いゲーム界のアイドルです』 「よしっ、開始の合図と共に」  シュッと音がしたと思ったら相手が倒れていた。 「みかん、急すぎだ。合図があってからからにしてくれ」 「は〜い」  この緊張感のない言い方が鼻につく。  ピーと試合開始の合図があり、俺が走り出すとシュッと音がして左右の頬を掠め2本の矢が相手の胴体に突き刺さった。 『危ない。後ろからやられるところだった。』 「みかんよくやった。次もよろしくな」  みかんはガッツポーズで答えた。  俺は審判を呼び次の試合を始めるよう指示をしたが、まだBブロック、Cブロックの一回戦目が終わってないらしい。次の試合まで30分掛かると言っている。 「みかん、次の試合まで30分ある。待てるか?」 「いや。待てない」 「ゲーム界のアイドルがこう言っているが。どうせなら全員まとめて掛かって来てもらえると助かるのだが」 「はぁ」  審判の困った表情に俺は鞄から厚い封筒を取り出して、彼の懐中に収めた。審判は唖然とし懐から封筒を取り出そうとしたが、俺は力尽くで彼を抑えた。 「アイドルが暴れる前に運営に掛け合ってくれ。全員まとめてが難しければ、Aブロックの選手全員を並ばせておけ。一試合1分、2分で終わらせるから」  小声で審判に言い彼を走らせた。 「みかんもう少し待て」 「え〜、待てないよぉ。あたし先に帰るぅ」 「ちょっと待て。アイドルがいなくなったら皆んな寂しがるぞ。少し我慢しろ」  しばらく経ってAブロックの選手達が集まってきた。 「選手の皆さん申し訳ない。スーパーアイドルが試合をお待ちかねだ。協力してくれ。希望者には試合終了後サインをやるから申し出てくれ」    第二戦目、第三戦目は順調に勝ち第四戦目が始まる。スタート地点に立つ俺とみかんはいつも通り作戦も練らずにいた。  ピーと言うスタートの合図と共に走り出すと、相手側が地面を引き上げガードを固める。 「あんなの木っ端微塵にしてやる」  パンチでガードを木っ端微塵にすると相手選手の姿が見えなかった。 「どこ行った?おいみかん乱射しろ」 「あたし捕まっちゃったぁ〜」  みかんが情けない声で俺に助けを求めて来た。俺の後ろに気配を感じ振り向き様に短剣を一振り。爆発して一瞬でフィールドが焼け野原になった。 「違反かもしれないが勝ちは勝ちだな。みかん、俺の犠牲になってしまってごめん。負けて悲しむのはお前だ。許せ」  フィールドが落ち着くと顔が煤だらけで洋服がボロボロになったみかんが棒立ちしていた。 「勇司ひどい〜」 「二人ともやられるよりはましだろう。着替えはあるから早く着替えろ」
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