第13話 XX2探索

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第13話 XX2探索

 取締役会が終わるとまた家族会議が開かれた。  家族会議はリビングのテーブルで行う。  テーブルを囲う様に家族が並んで席に着いていて、俺は誰とも目を合わせず俯いている。  俺も姉貴も親父も最近学校に行ってない。  こうちゃんは元気でやっているだろうか。  人の心配をしている場合ではないのだが、XX2をダウンロードして遊んでいた事をバレるのが怖く自宅にいるが落ち着かない。しかも家族と顔を合わせなければならない事で不安は募るばかりだ。     学校に行きたい。 「New Worldの閉鎖が決まった。そこでだが美幸の捜索及び新バージョンの探索をどの様に行うかを考えよう」  親父が話を切り出した。 「美幸の捜索を最優先で考えたいと思う。いいかな」  お袋も姉貴も頷く。俺に目を向けられたが全く興味が無いため俺は俯いている。 「勇司はどう思う?」  親父が突然俺に振ってきた。 「うぜえ」  いつもの回答だ。だが目は伏せたままだ。  親父はその後も話し続けた。結局、XX2を探索し手掛かりを掴むことにした。 「夢は美幸が消えた時、美幸の側にいたのか?」 「ううん。赤ちゃんをあやしていたから気がついた時はかなり後かもしれない。それとだけど、XXは精神体即ち意識がゲームの世界に入り、ゲーム内で設定した姿を形作って行くから、美幸さんみたいに生身の体では行かないはずなんだけど」 「と言う事は、XX2は『X』2と変わらないのかもしれないな。試しにやってみるか」 「パパ。どうするつもり」 「弓心配するな。探索は勇司と一緒に行く。初めの転送だけ付き合ってくれ」  俺達は輪になって向かい合った。  親父はお袋の手を握り、俺は親父とお袋の手を握った。できればお袋とずっと手を握っていたい。そんな思いは届くはずも無く永遠に自分の心に閉じ込めておくことにした。  俺は顔を上げるとお袋と目が合い、お袋は俺にニッコリした。優しい瞳だ。愛おしい。  俺は姉貴に育てられた。お袋と遊んだ記憶は殆どない。姉貴はいつもお袋が側にいたらしく羨ましい。  お袋の合図でXX2の世界に入って行った。  XX2の世界はどこまでも続く草原が風に揺れ、雲がゆっくりと流れている。 「『X』2と同じ景色だな」 「ええ。薄気味悪いわ」  ゲーム内も同じ景色でうっすらと見える城を目指して進んでいった。 「弓は帰れ、後は俺と勇司で行く。これを持っててくれ」  親父は首に掛けていた色の付いた石に紐を通した首飾りをお袋に渡した。お袋はそれを受け取ると姿を消した。 「勇司、どっちに行けばいいんだ」  俺は黙っている。 「お前がXX2をプレイしていたのは知っている。ママには話してないから安心しろ。で、あの城を目指すのか?」 「ああ」 「よし行こう。ママのスキルを付与してあるから一瞬で行けるぞ。あの城を想像して行きたいと願えば行ける。やってみろ」  親父の言う通りやってみると意外と簡単にできた。みかんも使っていたスキルか。  親父が後追いでやってきた。 「最上階まで一気に行くぞ。Monsterの討伐は任せる。お前の実力も見たいしな」  簡単なことだ。剣一振りでMonsterは木っ端微塵となる。  最上階に着いたが別段変わった所は無く元に戻ることにした。城を出るとあたり一面にMonsterがゾロゾロといて蟻の行列みたいだ。  親父は苦笑していたが、大した事は無く片っ端らから討伐していくだけだ。 「右半分は勇司に任せるから俺は左半分を始末する」  俺に任せておけと言おうかと思ったが辞めた。俺がスタート地点に着いた時には親父はまだ戦っていた。 「情けない」  親父の討伐が終わった時には彼は息切れをしていて、俺からしてみれば弱いと思ってしまう。 「弓聞こえるか。これから帰還する」 『わかった。お迎えに行こうか?』 「勇司に連れ帰ってもらうからそこで待っててくれ」 「はぁ!」  俺は抗議しようかと口を開いた時、お袋から通信があった。 『わかった。勇司、パパをよろしくね』 『はぁ。お袋にああ言われたら断れない』  俺達が転送を完了した時には親父とは別の地点に着地した。お袋が着地地点で待っていてくれた。嬉しかった。抱きつきたかったが、男だからと思いいつもの様に仏頂面でリビングのテーブルの席に着いた。  ※  部屋の壁はクリーム色に近くカーテンは無地のピンク色で窓を開けている部分が風で揺れている。  部屋にはシングルベッドの他に学習用のデスクと衣装ケース、本棚が並んでいる。 「勇司、頑張ったわね。そして残念でした。貴方達では彼女達がいる場所まで辿り着けないわ」  あたしの目の前には複数のモニターが並びXX2のあらゆる箇所が見渡せる様になっている。 「みかん。お風呂先に入ってぇ」 「は〜い」  あたしはモニタを視覚できない様にし部屋を出た。
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