第1話 第二の魔界

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第1話 第二の魔界

 この物語は300年程前になる。 神族と俺達魔族はいざこざは少なからず有ったが、天界と魔界の均衡は保たれていた。  それは俺と兄の実の母であるカルディア・アルテヘイトの前の代までの話である。  父である魔王ドラゴスタはこの世の創造者であるアンデルセンにそそのかされ、カルディアの実の父である神・ギリシア・アルテヘイトを殺害し天界を崩壊させた。  魔王ドラゴスタはカルディアに軽く撚れ、神族の罰を受けたはずだが、事実関係はわからない。人間界に潜ったのだ。    魔界は神族により改善されて行った。魔界を覆っていた瘴気は薄れて行き、真っ白な雲が流れ、太陽が顔を出す。草が生え、花が咲き、木々が育つ。小鳥が囀り、虫達が騒ぎ出す。  魔界は天界と瓜二つと思える程に美しい国になった。  父魔王ドラゴスタと母神族カルディアは結ばれ、兄アルテヘイトと弟である俺カルデラが生まれた。兄は神族の王である名を授かり、俺は母の名を受け継いだ。  神族と魔族は親しくなり天界と魔界を行き来できる様になった。  神族と魔族の集まりで天界と魔界の統一案があったが父も母も反対した。  天界、魔界の統一はどちらかが滅びることになる。恐らく神族が魔族を支配することになるのだろう。  早くも父、母の想像が現実となった。  アルテイシア・アルテヘイト  こいつが元凶だ。  なぜ母カルディアは神を継承しなかったのか理由がわからない。  あの小娘が神を継承し、母と父が人間界で骨を埋めてから天界と魔界の関係が悪くなって行った。  アルテイシアの妹ステファニーは政治に一切口を出さず母にベッタリだった。神・アルテイシアのやりたい放題になった。  神・アルテイシアは魔界を滅ぼしにかかった。  兄は神族に捕まり奴隷にでもされているのであろう。消息は不明だ。  俺は命からがら人間界に逃げ込み、長い時を人間界で過ごした。  人間が呼んでいる『X』Worldが俺の拠点だ。俺が作った第二の魔界になる。  そして見つけた。木城裕也。  こいつは優秀だ。実の親を俺の餌にしたのだから。  俺は木城貴教から整体エネルギーを吸収し魔王復活に注力した。魔獣を生み出し人間を食らった。それでも完全復活は難しい。若いエネルギーが必要だった。  新たな餌が。  木城裕也は本当に優秀だ。我々の子孫である人物を探し出した。それだけでなく新たな餌まで用意したのだ。  我々の子孫がどう言う経緯で生まれたのかは不明だが、父と母の子孫である『花』が関係している。  本来なら神聖な力と魔力を持ち合わせた子孫が生まれ、継承していくはずだが、末裔は神族と魔族にわかれた。  神族の末裔である久米弓、魔族の末裔である南光太郎がそれだ。  そう『花』は神族と魔族の子でありながら、人間として生まれたただ一人の子だ。    俺は木城裕也を使い、久米弓と南光太郎を引き寄せ新たな子を産ませた。    久米勇司  彼は神聖で魔力が高い。新たな生命体になり得る人物だ。その引き立て役が弓月みかんだ。彼女を唆し魔力を注ぎ込んだ。  そして時が来た。魔王復活の時が。
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