第5話 事件収束後のみかんと俺

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第5話 事件収束後のみかんと俺

 改めて周囲を見渡すと一面が瓦礫だ。どこまでも瓦礫が続いている。ウルトラマンやGODZILLAの映画を見た事はあるが比にならない。 「道路も鉄道もダメだ。あるとすれば空路か」    何れにしてもみかんを安全な場所に避難させないと襲われたり自衛隊に確保されるだろう。 「みかん、立てるか?」 「うん。あたしがやったんだ、よ、ね」  みかんも辺りを見回している。 「みかん、今は考えるな。まずはここを離れよう。行きたい所はあるか?」  みかんはまだ責任を感じている。このままだと何でも受け入れてしまいそうだ。  とにかくどこかに…自宅か。 「みかん、俺に捕まれ」  みかんとハグをし自宅の座標を頭に浮かべると転送した。  無事自宅に転送したが、着地点が悪かった。  28階エレベーターホール前。右を見れば粉々になった玄関ドアの破片が散らばっていて、左は取締役執務室。  こっちだ。こっちがいい。 「みかん、こっち行こう」  みかんの手を引き取締役執務室のドアを開けると、そこはまるでテレフォンショッピングの様だった。ひっきりなしに電話が鳴り秘書達が電話対応をしている。奥にあるデスクには姉貴が席に着きひたすら印を押している。 「姉貴この状況は?」 「勇司何処行っていたの!」 「ぐすっぐすっ、うぇ〜ん」  みかんが泣き出した。俺はみかんの肩を抱きしめ姉貴に注意した。 「姉貴怒鳴るなよ」  姉貴は慌てて仕事の手を止めると、みかんに駆け寄り抱きしめた。 「ごめん。ごめん。みかんちゃんごめんね」 「おい、姉貴。俺にハグはないのか?」 「さあさあ、ここに座ってね。足立、飲み物」 「今暫く」 「ねぇちゃん。姉上。姉様〜」    俺は誰にも相手されず自分でコーヒーを入れソファに座った。 「勇司ちょっとこっちに来て」  俺はコーヒーを一口啜り姉貴に着いていくとデスクの前に座らされ押印のやり方を説明され仕事を押し付けられた。  姉貴はみかんを宥めている。  おかしい。俺に対する態度が雑すぎる。  家族の接し方を間違えたか?  何れにしてもみかんを家族の元に届けてやりたい。こんな仕事は魔法で片付ける事にした。  体力が半減するが仕方ない。  俺は分身を作り同じ作業をさせた。単調な作業は分身にやらせた方が効率が良い。 「ねぇちゃん、あいつにやらせてるから他の仕事につけよ」 「勇司ありがとう。助かるわ」  俺はみかんの隣に座り肩を抱いた。 「ねぇちゃん、ヘリを借りたいんだけど」 「社有車使えばいいじゃない」 「区民が長期休日の為道路は渋滞中、鉄道はスト中だ」 「そう。わかったわ。足立チャーターして」  俺とみかんはヘリに乗りみかんの自宅を探したが跡形もない。次に向かったのはおばあちゃんの自宅だった。 「住所は?」 「埼玉県熊谷市です」 「熊谷市までお願いします」  Vermont社直轄病院のヘリポートに着陸し、パイロットにVermont社に帰ってもらう様指示をすると、俺はタクシーを呼びみかんのおばあちゃん宅へ向かった。  みかんは不安な顔をしていておばあちゃん宅のチャイムを押すのを躊躇っている。 「みかん。俺が着いているから心配するな」  みかんは頷きチャイムを鳴らした。 「はい。弓月です」 「あの、みかんです」 「みかんちゃん?ちょっと待ってて」  通された俺は挨拶をし、みかんの親戚の前で釈明をする事になった。  みかんは疑われている。当たり前の話だ。みかんの皮をかぶった悪魔が暴れまくっていたのだから。しかもテレビ局のヘリを操り生放送を世界に放送していた。  みかんは目を伏せ顔をこ張らせている。 「あの、ご存知かと思いますが、でかい怪物が悪魔でみかんさんは悪魔に捕えられていました。街で暴れていたのはみかんさんの姿に似せた悪魔の手下でした」  親戚方は俺の話を真剣に聞き頷いていた。詳細は伝えていないが、信用してくれたらしい。話が終わると親戚方は笑顔になり涙する者もいた。  みかんの濡れ衣は晴れたが、みかんの両親の行方は不明とのこと。World2で見たのが真実でない事をみかんは祈っていたに違いない。俺は客室に通され、みかんは面倒を見てもらっていた頃の部屋に行った。  みかんの事が心配で眠れなかった。  翌日のみかんの様子にかわった事がない為一安心した。  数日おばあちゃん宅でお世話になった後、俺とみかんはぶらぶらしていた。  とは言え日本国民全てに釈明したわけではない。みかんにはメイクや帽子を被らせカモフラージュする様にさている。 「みかん、行きたい所はないのか?」 「う〜ん。特に」 「そっか。ゆっくり探そう」  今日は秩父の方まで足を伸ばし、自然から採れた物を食べ、少しでも気を紛らせればと思っていた。
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