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第6話 みかんを守るために
秩父に到着し牧場に行った。
乳搾りや新鮮な牛乳を飲んだり牛と戯れたりみかんに気を使わせない様細心の注意を払いながら楽しく過ごした。
俺達はロッジを借り暫く秩父で暮らしてみる事にした。自給自足も考え畑を耕し、牧場の手伝いもし住民と親しくなってきた。
みかんはロッジのオーナーと料理をしたりして楽しんでいる様だった。
「なあみかん。そろそろ学校に行かないか。俺達中学卒業していないし友達も作れるかもしれないし」
みかんは渋々だが了承した。
転出届は大惨事の事もあり不要となった。転入届と身分を証明する物をそれぞれ用意して、近くの役所に提出した。
ロッジのオーナーに頼み込み保護者になってもらった。晴れてここの住民となり近くの学校に通える様になった。
近くの学校は少子化の影響で、生徒が少なく三学年が一つのクラスで勉強していた。
俺とみかんは転入生として入学したが、俺の事もみかんの事も知らないのか事件の話が表に出る事もなく、在校生の人達が親切にしてくれた。
初めのうちはみかんは距離を置いていたが、慣れてきたのか皆んなと仲良く遊ぶ様になった。
ここの環境にも慣れてあっという間に3年が過ぎた。
「春休みが明けたら高校生だな」
「うん。楽しみ♩」
みかんは段々明るくなって来ている。もう大丈夫だろう。
俺は鷹をくくっていた。
入学式は牧場のオーナーが親代わりに来てくれて久しぶりに家族の暖かさを感じた。
暫くして俺は男子生徒に呼ばれ、みかんは女子生徒に呼ばれた。やり方は違うがリンチを受けた。手を出そうと思えばできたがみかんのために良くないと思い素直にやられた。
「お前怪物が現れた時の奴だよな」
「お前らのせいで全て失ったんだぞ」
俺は全員から数発殴られた。
みかんは犯人扱いを受けお腹や腕、足を蹴られ打撲があり痛々しかった。
翌日、俺達は学校を休んだ。この街を離れる事も考えた。
「みかん、引っ越そうか」
「ううん。あたし頑張る」
「無理するなよ。みかんが辛い思いをするのは嫌なんだよ。なあ、引っ越そう」
みかんは固く首を横に振った。
翌日も休もうと思った。朝早く自宅のチャイムが鳴った。
「朝から何だよ」
俺がドアを開けるとリンチした奴らと先生がドアの前にいた。
「何の用ですか?今日も学校休みます」
俺は思い切りドアを閉めようとするとリンチをした生徒全員が土下座をし、大きい声で謝罪した。
みかんはびっくりして起きて来た。オーナーも隣から出て来てみんなでオーナーのリビングで話をする事になった。
「この度は申し訳けございませんでした」
先生の後に全員が謝罪をした。
どうやら現場を見ていた先生がいてその後、彼らから事情を聞いていたらしい。
テレビでも話題になっていて、あれはみかんの姿をした悪魔の仕業でみかんは悪魔の人質になっていて、みかんを救出した俺がヒーローになっていた。
しかも天皇皇后両陛下、皇族方を初め総理大臣、各大臣を保護し、首都機能ができる体制を提供して、復興に全面協力をしているVermont社会長の南光太郎と社長の南弓との長男で、みかんは南家の養女として迎えられるとの事。
おかしい。
誰がリークしたんだ。姉貴の記憶は消されていたはず。しかもみかんが養女とは聞いていない。
でもそのお陰でロッジの無償提供、物資の無料提供、学校では王子、姫様扱いになり、何不自由のない生活を送れている。
だだ俺たちは兄弟になってしまった。
「みかん」
「勇司。どうしよう」
「やばい。俺達兄弟になってしまった」
「血縁関係はないから大丈夫だよぉ」
「いや、法律上ダメだろう」
みかんを守るための手段だったのだろうが、俺にとってはありがた迷惑だ。せめて夫婦にして欲しかった。
「はぁ」
「はぁ」
俺たちのため息は止まらない。
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