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第7話 帰還者
その頃、現世に帰還した第一班は…
「いったぁ」
「ここどこですかぁ」
「ちょっと重い」
「重いってどう言う事ですか!」
「ちょっと、皆んな落ち着いて。まず、ここがどこか調べなくちゃっ」
ある子が部屋の様子を見てくれて教えてくれた。
「可愛いと言うより男の子っぽい部屋みたい」
「何か飾ってある?」
「トロフィーがたくさんあるよ」
「やったね。ぶじ帰還よ」
「えー、マジぃ」
「やっほー」
「沙知良い加減にしなさい!!」
母の声が聞こえて、生きて帰って来れたんだと、私はほっとした。
ほっとしている場合ではなかった。
『皆んなの無事を確認しなくちゃ』
「私一番下みたいだから状況がわからないの。上の人から順番に立ってもらえる?ベッドもデスクも使っても良いわ」
暫く待った私は思うように体が動かない。
『全然状況が変わらない』
「ねぇ沙知さん、何名か失神しているみたい」
「沙知さんがその子達の下敷きになっているよ」
状況がやっとわかった。私は彼女達をゆっくりベッドに運んでもらうよう指示をし、立てた頃にはぐったりしていた。
失神している人以外が床に立つと、「満員電車みたい」と誰かが言った。
私は皆んなを見回した。
「提案があるの」
「どうしたの?」
「みんなでリビングにいかない?」
「good idea!」
失神している子を残してリビングに移動した。母にちゃんと説明をし、取り敢えず食べ物を用意してもらった。
「絵美ちゃんだったよね」
「うん」
「ちょっと付き合って」
私は彼女を連れて部屋に戻ると失神した子達の意識が戻っていた。彼女達にご飯を食べてもらう様に言い、絵美ちゃんと並んでベッドに座った。
「これが私のポータブルゲーム機よ」
「可愛い。デコがいっぱい」
彼女は私のゲーム機をクルクル回して目をキラキラさせている。
「ちょっと電話するね。美幸のところよ」
「もしもし、美幸?」
『沙知ちゃん?グスン』
「何泣いているの?」
『だって、光太郎が亡くなっちゃったよ。え〜ん』
「ちょっと、光太郎君が亡くなったってどうしてわかるの?」
『今○○葬儀場で告別式をやっているところよ』
「告別式⁈」
私と絵美ちゃんは顔を見合わせた。
「美幸聞きなさい。光太郎君は亡くなってないから。今すぐ告別式を中止して!火葬もしないで」
私と絵美ちゃんは皆んなに事情を説明して○○葬儀場に向かった。
『火葬をしないで』
神様にひたすら祈った。
○○葬儀場に着くと受付を片付け始めていて、参列者も去り始めていた。参列者に頭を下げている夫婦がいる。光太郎君のご両親だろう。
私達は彼らに挨拶をし、涙で顔がくしゃくしゃになっている美幸に向かい深く頭を下げた。
「話はわかったわ。でも脳死なのよ。延命しても…」
私もわかっている。しかし、ここで諦めたら命の恩人に顔向できない。
「あの、光太郎君は私達の命の恩人なのです。彼を必ずこの世に連れ戻しますから、この体を保管して下さい。お願いします」
何度も何度も頭を下げた。
結局、美幸を残して絵美ちゃんと二人で自宅に戻り一息着いた。
「絵美ちゃん泊まってく?」
「私の家、ここからそんなに遠くないよ。今から帰って荷物持ってこようか?」
私は少し考えた。
「絵美ちゃん家に行こう」
遠慮する絵里ちゃんに無理を言って彼女の自宅へ行った。
「可愛いお部屋」
「ありがとう」
「貴重品と」
「「ポータブルゲーム機ね」」
私達は私の自宅にトンボ帰りをした。
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