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12-5(大樹 編) 心のダメージが回復
糸山旅館に着いて、まだ早い時間なのに、チェックインの手続きをしてくれた。
愛美さんが、僕と別々の部屋だと思っていたということに、逆にビックリしたが、またなんとか説き伏せ、同じ部屋に泊まることに了解してもらった。
もしかして、愛美さんって、僕と一緒にいたくない?
少し不安になりながらも、仲居の説明を、出された温泉まんじゅうを食べながら聞く。
今日宿泊するのは、部屋に露天風呂と内風呂がついているらしい。
露天風呂……。
愛美さんと一緒に入りたい。
つい願望を口に出してしまったが、愛美さんからは即拒否。
やっぱり、愛美さん、あんまり僕のこと好きじゃないのかもしれない……。
めずらしく僕は自信をなくしながら、愛美さんがトイレに行ったタイミングで、花束の手配の確認と、持ってきてもらうタイミングを打ち合わせした。
これまで、自分から好きだと告白さえしたことない僕が、いきなりプロポーズ。
うまくいくか心配だ。
僕はいつものように、『できるできる』と自己暗示をかける。
物事がうまく運ぶには、自分の心持ちしだいだ。
『なんとかなる』と思っていれば、案外なんでもできるものだと、これまでの経験で知っている。
母屋に案内してもらい、玲子女将と愛美さんが初めて顔を合わせた。
愛美さんの顔を見た途端に、泣いてしまった女将へすぐに駆け寄る彼女は本当に優しい人だと思う。
その愛美さんに、僕が聞きたくても聞けなかったことを女将はサラリと聞いた。
「好きな人やお付き合いしている人はいるの?」
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