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12-6(大樹 編) 穏やかなデート
愛美さんと一緒に仏壇に手を合わせ、女将の作ったほうとうをごちそうになった。
小さい頃に泊まりにきた旅館の女将さんの家で、手作りの昼食を頂くなんて、改めて考えると変な感じだ。
「おいしいですね。 私、ほうとうって初めて食べました」
冷房を入れてあるが、初夏にみんなでフーフーと、熱いほうとうを食べる。
愛美さんも顔をほてらせながら食べていて、気持ちがほっこりする。
ニコニコしながら、僕たちの様子を見ていた女将が、僕の両親がこの結婚話についてどう思っているのか尋ねてきた。
両親には「結婚します」って言うだけでいいだろうと思っていたが、特に母が愛美さんに会いたいとうるさい。
愛美さんに、僕の両親に会ってもらえるか聞くと、遠慮がちに行ってもいいのかと聞いてくる。
『プラトーリゾートグループの社長の家』に、行きたいという人はこれまでに何人もいた。
だけど、付き合っていた彼女を実家に連れていったことはなく、むしろ彼女を両親に紹介するなんて、面倒くさいと思っていた。
かわいくて、律儀で、優しい愛美さんなら、僕の両親もきっと喜んでくれる。
両親に紹介するというか、自慢したいくらいだ。
現に愛美さんは、挨拶するにはカジュアルな服だからとか、菓子折りの準備もないとか、また律儀なことを言っている。
明日、実家に行く前にまとめて僕が買ってあげよう。
愛美さんの服を選ぶの、楽しみだな。
僕は人形のレディの着せ替えをする感覚に近い感じで、愛美さんの着せ替えをしたくなっていた。
愛美さんと女将が、食器を片付けてくれている間に、僕は両親に電話し、明日実家で夕食を一緒にする約束をした。
父も母も、声が喜んでいる。
少し親孝行している気がして、僕まで気持ちがくすぐったい。
こんな気持ちにさせてくれる愛美さんに感謝だ。
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