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12-7(大樹 編) 憧れの人形
デートすら、経験がないなんて……。
もしかして、愛美さんって……。
僕は、今まで怖くて聞けなかったことを、聞いてみた。
「付き合っている人や、好きな人はいないって言ってたけど、本当?」
「……これまで、男性とお付き合いしたことないんです」
その答えが返ってくると同時に、僕はつい愛美さんを抱きしめてしまった。
人から見られていても構わない。
愛美さんが誰の手にも触れられていないことが嬉しくて、もうここでキスしてしまいそうになる。
どおりで反応が、ウブでかわいいわけだ。
これから、僕がいろいろなことを教えてあげないと……。
もうすでに頭の中はピンク色の僕に、愛美さんは「ドキドキしすぎて死んじゃいそう」なんてことを言うもんだから、笑ってしまった。
愛美さんの言葉が、時々僕の笑いのツボに入る。
本当に楽しい。
ずっと、こうやって愛美さんと仲良くしていきたい。
僕たちは手をつないで再び湖沿いを歩き出した。
そして、僕はある看板を見つけ、そういえば行ってみたいところがあったことを思い出した。
世界的にも有名な、人形作家の美術館。
僕が普段集めているキャストドールとは違うが、木綿の布にこだわった人形をすべて1人で手作りされている。
時々、テレビや雑誌などでもその人形が使われることもあり、やわらかい印象の作風が人気で、僕も欲しいなと思う。
だけど、『人形』なんて、愛美さんは興味あるだろうか?
母が言っていたように、30歳を過ぎたいい大人の男の僕が『人形』に興味あるなんて、ひいてしまうだろうか?
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