12-7(大樹 編) 憧れの人形

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 僕はイチかバチか、愛美さんに人形に興味があるかと聞いてみた。  すると、幼い頃はあまり買ってもらえなかったから、人形に憧れがあるという返事。  好感触な答えに、僕はホッとした。  美術館の入館料を払うと言って聞かない愛美さんを説き伏せ、ようやく2人で入る。  中はやはり人形が傷まないように、薄暗く、思ったより狭かった。  雰囲気のあるディスプレイや、ノスタルジックな着物の人形たちの表情に、僕は愛美さんがいることをつい忘れて見入ってしまった。  ドールのレディと同じ大きな瞳に、心持ち開いた唇をした愛美さんが僕を見上げて話しかけくる。  いつもレディに話しかけているような感覚になり、つい愛美さんのことを 『レディ』と呼びかけそうになってしまった。  あぶない、つい、レディって呼びそうになってしまった。  ヤバいな……この、愛美さんの不審(ふしん)な表情。  これは、もう少し、ドール好きは隠していた方がいいかもしれない。    僕は慌てて取り繕うように、笑みを浮かべる。  そして、愛美さんは僕が疲れているんじゃないかと心配してくれた。  僕が大丈夫だと言っても、自分の方が疲れたから、もう旅館に戻ろうと提案してくれる。  やっぱり、愛美さんは優しいな。    僕は、疲れていないことをアピールするために、少し冗談めかして愛美さんをお姫様だっこしようとすると、愛美さんが本気で逃げ出すので、ちょっと追いかけっこ。    めちゃくちゃベタ過ぎるデートっぽいデートに、僕は嬉しくて笑いがこみ上げてくる。  昼間はこんなに爽やかデートなのに、夜はプロポーズして……そのあとは……。  にやけてくる顔を戻そうとするが、夜が楽しみ過ぎて顔の表情が崩れっぱなしの僕だった。
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