13-1 素敵なお部屋

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13-1 素敵なお部屋

 追いかけっこのように2人で走って、途中高原(たかはら)さんが陸上選手のようなきれいなフォームで、追いついてくる。  ちょっと怖かったけど、私はあっさり捕まってしまった。 「つかまえたっ。 今日はもう離さないから、覚悟しといて」  笑いながら、高原さんは後ろから私をギュッと抱きしめる。  離さないなんて、また高原さんのいつもの冗談?  なんて返せば正解なのかわからなくて、私は固まってしまった。 「本当に愛美(あいみ)さんはかわいいなぁ」  私の頭をポンポンと()でて、また手をつなぐ。  旅館に戻っても、高原さんは手を離さず、ずっとつないだまま。  ちょっと恥ずかしかったけど、慣れてきたのか、最初に手を握られた時より、ドキドキは治まっている。  もう、チェックインを済ませているので、フロントで鍵をもらった。  糸山(いとやま)のおばあちゃんが言っていた、仲居頭(なかいがしら)幸代(さちよ)さんが、部屋まで案内してくれる。 「糸山旅館で一番いいお部屋ですよ」  3階建て、最上階の奥、『東雲(しののめ)の間』。  廊下に通じる鍵付きの外引き戸を開けても、まだ通路が続いていた。  屋内なのに玉砂利(たまじゃり)に飛び石が敷いてあり、レトロな木枠の灯籠(とうろう)が灯っていて豪華な雰囲気が漂っている。  もしかして、宿泊代すごく高そう……?  やっぱりちゃんといくらなのか聞いとけばよかった。 「お夕食と布団敷きが終わりますまでは、鍵を開けておいてくださいますと助かります。  お休みの際には、防犯のためにもどうぞご施錠くださいませ」  幸代さんは、説明しながら私たちを部屋のあがり口に入れて、(ふすま)を開けてくれた。  部屋の中を見た私は、思わず声を上げる。 「うわぁ~すごいっ」
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