553人が本棚に入れています
本棚に追加
13-1 素敵なお部屋
追いかけっこのように2人で走って、途中高原さんが陸上選手のようなきれいなフォームで、追いついてくる。
ちょっと怖かったけど、私はあっさり捕まってしまった。
「つかまえたっ。 今日はもう離さないから、覚悟しといて」
笑いながら、高原さんは後ろから私をギュッと抱きしめる。
離さないなんて、また高原さんのいつもの冗談?
なんて返せば正解なのかわからなくて、私は固まってしまった。
「本当に愛美さんはかわいいなぁ」
私の頭をポンポンと撫でて、また手をつなぐ。
旅館に戻っても、高原さんは手を離さず、ずっとつないだまま。
ちょっと恥ずかしかったけど、慣れてきたのか、最初に手を握られた時より、ドキドキは治まっている。
もう、チェックインを済ませているので、フロントで鍵をもらった。
糸山のおばあちゃんが言っていた、仲居頭の幸代さんが、部屋まで案内してくれる。
「糸山旅館で一番いいお部屋ですよ」
3階建て、最上階の奥、『東雲の間』。
廊下に通じる鍵付きの外引き戸を開けても、まだ通路が続いていた。
屋内なのに玉砂利に飛び石が敷いてあり、レトロな木枠の灯籠が灯っていて豪華な雰囲気が漂っている。
もしかして、宿泊代すごく高そう……?
やっぱりちゃんといくらなのか聞いとけばよかった。
「お夕食と布団敷きが終わりますまでは、鍵を開けておいてくださいますと助かります。
お休みの際には、防犯のためにもどうぞご施錠くださいませ」
幸代さんは、説明しながら私たちを部屋のあがり口に入れて、襖を開けてくれた。
部屋の中を見た私は、思わず声を上げる。
「うわぁ~すごいっ」
最初のコメントを投稿しよう!