13-1 素敵なお部屋

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 古い旅館と言っても、明治時代とか大正時代みたいなイメージの、丁寧に手入れされたロマンチックな内装。  (ふすま)の開いた先には、明るい8畳間と6畳間の2部屋がつながっている。  富士山が見える方と、(みずうみ)が見える両側に窓があり、レトロな窓枠はきれいな景色を映していて、それだけで絵になりそうだ。  最初に幸代(さちよ)さんが言っていた露天風呂は、湖の方向に陶器の湯船があり、きちんと外からは見えないような柵がめぐらされている。  トイレと洗面所の横に、もう一つお風呂場があり、そこにはヒノキの浴槽で、いい香りがしていた。    私のアパートのお風呂場よりも大きいお風呂が2つも……。  贅沢(ぜいたく)過ぎる。  畳敷きのお部屋の奥には、何年も磨かれてツヤツヤと光っているフローリングがあり、1階にもあったような猫足のソファーが、長いのと1人用のが2つ置いてある。  畳も青々(あおあお)としてきれいで、入り口から奥の8畳の方に、大きくて重厚な座卓と、座椅子にはふかふかの座布団が設置されていた。  障子(しょうじ)の細い格子(こうし)や、レトロな照明なども、とても素敵だ。 「すごいっ。 とってもいいお部屋ですね、高原(たかはら)さん」  振り返って高原さんを見ると、真剣な顔で、壁をコンコンと叩いたり、窓を開けてみたりしている。 「あ、ごめん。  ……ついどこを改装したらいいかなって考えてた」  仲居の幸代さんにも、「失礼ですよね、すみません」と謝った。  高原さんはお休みの時も仕事のことを考えてて、すごいな。  本当に、お仕事に対してまじめなんだな。
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