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13-3 夜がくるのがこわい
高原さんの腕の中から、抜け出した私は、ようやく息がつけたような気がした。
さっきキスされた右耳を手で押さえて、高原さんを振り返る。
「ダメですっ。
まだこんな明るい内から色気をムンムンに出しちゃ」
気が動転していた私は、なんて言っていいかわからずにおかしなことを言ってしまい、高原さんにまた爆笑されてしまった。
「あははははは。
そうだね、ごめん。
じゃあ、暗くなったら色気出すね」
「そ、そう言うことじゃなくて……」
うぅー、なんて言えばいいんだろう。
だけど、正直なところ、さっき耳をなぞられたりキスされた時、身体がゾクゾクして、もっと触られたい感じがして……あれが気持ちいいってこと?
笑う高原さんと、戸惑っている私。
「失礼いたします」
その時、襖の向こうから、糸山のおばあちゃんの声がした。
「どうぞ」
高原さんが声をかけると、おばあちゃんがニコニコとして畳敷きのお部屋の前で丁寧に座ってお辞儀する。
「お2人とも、仲良くしているみたいでよかったわ」
高原さんの笑い声が聞こえたのかな?
まさか、さっきの私の変な声が出ちゃったの、聞こえなかったよね?
私は恥ずかしくて、そぉっと高原さんから距離を取ろうとした。
「えぇ、とても仲良くしています」
そう言って高原さんは、逃げようとしている私の手を握りしめた。
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