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「周りの人からいじめられていると、自分はダメな人だと思って自信が無くなるんだよ。
だから、魔法でキラキラのシンデレラになった時、周りの人から誉められて、シンデレラも嬉しくてダンスを一緒に踊ったけど、
魔法が解けたらまたボロボロの服になって、シンデレラは悲しくなったんだと思うな」
真剣な顔で、僕の話を聞いている樹季。
そんな息子がかわいくて、僕は表情をやわらげる。
「樹季は人に自信を与える魔法使いと、ダメな人だと思わせる意地悪なお母さん、どっちがいい?」
「魔法つかいのおばあさんがいい」
大きい声で答える樹季に、ちょっと焦る。
「乃愛ちゃんはもう寝てるから、小さい声にしような」
樹季は自分の口を、その小さな両手でふさぐ。
その仕草に、僕はつい頬がゆるんでしまう。
隣では全く起きる気配もなく、スヤスヤと眠っている娘を見て安心した。
「じゃあ、樹季は魔法使いになれるように、人に意地悪しないようにしような」
「ぼく、いじわるしないもん」
「でも、さっき乃愛ちゃんにおもちゃを貸さなくて、泣かせてたよね」
「……うん」
「魔法使いになれないよ?
乃愛ちゃんにも優しくする?」
「うん、する。
……あ、でも、パパ。
僕は男だから、おばあさんになれないよ」
「ん?」
「魔法使いはおばあさんでしょ?
おばあさんは女だよね?」
素直な着眼点に、思わず笑ってしまう。
「大丈夫。
パパもママにきれいなドレスを着せた、魔法使いだから。
男でも、人に自信を与える魔法使いにはなれるよ」
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