番外編-2 シンデレラの魔法使い

2/6
前へ
/450ページ
次へ
「周りの人からいじめられていると、自分はダメな人だと思って自信が無くなるんだよ。  だから、魔法でキラキラのシンデレラになった時、周りの人から誉められて、シンデレラも嬉しくてダンスを一緒に踊ったけど、 魔法が解けたらまたボロボロの服になって、シンデレラは悲しくなったんだと思うな」  真剣な顔で、僕の話を聞いている樹季(いつき)。  そんな息子がかわいくて、僕は表情をやわらげる。 「樹季は人に自信を与える魔法使いと、ダメな人だと思わせる意地悪なお母さん、どっちがいい?」 「魔法つかいのおばあさんがいい」  大きい声で答える樹季に、ちょっと焦る。 「乃愛(のあ)ちゃんはもう寝てるから、小さい声にしような」  樹季は自分の口を、その小さな両手でふさぐ。  その仕草に、僕はつい頬がゆるんでしまう。  隣では全く起きる気配もなく、スヤスヤと眠っている娘を見て安心した。 「じゃあ、樹季は魔法使いになれるように、人に意地悪しないようにしような」 「ぼく、いじわるしないもん」 「でも、さっき乃愛ちゃんにおもちゃを貸さなくて、泣かせてたよね」 「……うん」 「魔法使いになれないよ?  乃愛ちゃんにも優しくする?」 「うん、する。  ……あ、でも、パパ。  僕は男だから、おばあさんになれないよ」 「ん?」 「魔法使いはおばあさんでしょ?   おばあさんは女だよね?」  素直な着眼点に、思わず笑ってしまう。 「大丈夫。  パパもママにきれいなドレスを着せた、魔法使いだから。  男でも、人に自信を与える魔法使いにはなれるよ」
/450ページ

最初のコメントを投稿しよう!

550人が本棚に入れています
本棚に追加